ラーニングコーナー
2019/01/15
Celsis Rapid Microbial Detection System:ATP法による微生物迅速試験
- 微生物・エンドトキシン測定
Charles River社の「Celsis Rapid Microbial Detection System(以下、Celsis)」は、世界中の企業でトイレタリー製品や化粧品、医薬品などの原料や中間体、最終製品の微生物試験に採用されている微生物迅速試験システムです。ATP生物発光法の仕組みを用いた微生物迅速検出により、24時間の培養で微生物(細菌・酵母・カビ)の有無を確実に検出します。
Celsis導入のメリット
塗抹法などの従来法では、微生物検査・検出に時間がかかったり、微生物検査の結果が出るまで製品の出荷を待つ必要があったりするなどの課題があります。Celsisでは、以下の課題を解決します。
検出時間の短縮
日本薬局方微生物限度試験の1次スクリーニングににCelsisを使用することで、24時間の培養で結果が得られ、微生物試験に要する時間を大幅に短縮することができます。
コンタミネーション発生からの回復促進
万一コンタミネーションが発生した場合でも、Celsisであれば早期に検出することが可能です。
早期発見により影響を受ける製品量を最小限に抑え、素早く是正処置を講じ、設備を迅速に通常操業に戻すことができます。
運転資金の削減・経営効率の改善
製品出荷までのサイクルが短縮し、運転資金投資を削減することができます。
また、微生物試験にかかる時間が短縮されるため、製造効率の向上も期待されます。
倉庫スペースの節約
微生物検査の結果が出るまでに必要な中間在庫や、安全在庫を保管するための在庫スペースを減らすことができます。
環境への配慮
従来法では検査に使用したプレートをはじめ、使い捨てプラスチック製品を大量に廃棄することを余儀なくされていました。
Celsisではそのような使い捨てプラスチック製品の使用を大幅に減らし、環境にやさしい微生物試験を行うことができます。
CelsisのATP測定試薬
CelsisのATP測定試薬は、微生物由来の酵素活性を利用して高感度なATP活性の測定が可能なAMPiScreen®と、微生物が産生するATPを測定するLumiScreen®の2 種類のキットから選択できます。これらのATP測定試薬は、米国FDAのDrug Master File(DMF)に登録されており、世界中の企業でトイレタリー製品・化粧品・医薬品など幅広い製品の原料・中間体・完成品の微生物迅速試験に利用されています。
AMPiScreen
Charles River 社独自のテクノロジーにより、微生物由来の酵素活性を利用して大量に産生されたATPを測定することで、迅速かつ高感度なATP測定を実現します。
LumiScreen
AMPiScreen よりも短時間に微生物から産生されたATP を測定します。
Celsis測定試薬の特長
高精度・高感度
- 1 cfu/製品1g・1mL(製品や菌種による)
迅速性
- 24時間の培養で微生物(細菌・酵母・カビ)を検出
測定可能なサンプルの種類が豊富
- 塗沫法では判定しにくい、色が濃い物の測定が可能
- フィルターを用いた測定法では困難な、粘性の高い物質や固形物の測定も対応
Celsisによる微生物迅速試験のワークフロー
ハンズオン操作は、前培養した検体をキュベットに分注するのみで、試薬の分注、測定は全自動で実施されます。
測定可能なサンプル例
- トイレタリー製品:シャンプー、歯磨き粉、フェイシャルパック、整髪料、石鹸、洗剤
- 化粧品:ファンデーション、リップクリーム、マスカラ
- その他:カプセル、ペースト剤、吸入剤、溶液、錠剤
CelsiのATP測定機器
Celsisではハイスループット機種「Celsis Advance II™」と、測定検体数が少ない施設での設置に最適な「Celsis Accel®」の2種類がございます。検出系や検出感度は2機種とも共通で、かつ従来機種「Celsis Advance」と同じです。
Celsis Advance II™
Celsis Advance II™は、世界中の企業でトイレタリー製品・化粧品・医薬品など幅広い製品の原料・中間体・完成品の微生物迅速試験に利用されています。迅速・全自動の微生物試験により、原料・中間体・完成品の在庫量を削減し、製造サイクルの短縮を可能にします。1日あたりの測定件数が多い施設に適しています。
1ランあたりの処理サンプル数:162検体
Celsis Accel®
Celsis Accel®はCelsis Advance IIの小型機種です。
Celsis Advance IIと同様、世界中の企業でトイレタリー製品・化粧品・医薬品など幅広い製品の原料・中間体・完成品の迅速微生物試験に利用されています。コンパクトな設計で、1日あたりの微生物迅速試験の件数が少ない施設に適しています。
1ランあたりの処理サンプル数:30検体
規制に対するCelsis RMD Systemの位置付け
日本薬局方とCelsis
日本薬局方におけるCelsis(微生物迅速試験法)の位置づけを、微生物試験法の概要とともにご紹介します。
- 微生物限度試験
生菌数試験および特定微生物試験が含まれます。
生菌数試験とは「好気条件下で発育可能な中温性の細菌及び真菌を定量的に測定する方法」(第18改正日本薬局方より抜粋)であり、医薬品やその原料中に存在する、増殖能力を有する微生物の数を確認する試験です。
特定微生物試験とは「規定の条件下で検出可能な特定微生物が存在しないか、又はその存在が限られているかを判定する方法」(第18改正日本薬局方より抜粋)であり、製剤ごとに定められた特定の微生物の存在有無を確認する試験です。 - 無菌試験
無菌試験とは「無菌であることが求められている原薬又は製剤に適用される」(第18改正日本薬局方より抜粋)試験であり、注射剤や輸液、点眼剤などに適用されます。無菌試験法には直接法とメンブランフィルター法の2つの方法があります。 - 日本薬局方におけるCelsisの位置付け
各国の薬局方における微生物限度試験法の項目には、「局方試験法との同等性が示されている場合は,自動化法を含む別の微生物学的方法を用いてもよい」と記されています。(欧州薬局方(Ph EUR) 2.6.12、米国薬局方(USP)<61>、日本薬局方 4.05)
この引用通り、従来の微生物方法を管轄する当局でも代替法の受け入れを認めています。すなわち、欧州、米国、日本の薬局方は、代替方式の使用が可能であることを明示しています。さらに、第十八改正日本薬局方(2021 年)の参考情報でも、微生物迅速試験法のうち間接的検出法の一つとして、菌体内のATPと酵素反応による発光現象を検出することを原理とした「生物発光法」が例示されています。
第十八改正日本薬局方(2021 年) 一般試験法
第十八改正日本薬局方(2021 年) 参考情報
Celsisの検証に関するガイドライン
他の様々な微生物学的試験の代替方式に関するガイドラインを下記に示します。
これらのガイドラインでも、Celsis RMD System が導入可能であることを示しています。
- 非経口製剤研究協会技術報告 33: 新たな微生物学的試験方法の評価、検証および実施
- 欧州薬局方(Ph EUR)5.1.6: 微生物学的品質管理の代替法
- 米国薬局方(USP)<1223>: 代替微生物検査方法の明記
- FDA CBBR 指針案: 細胞および遺伝子治療用品の無菌試験を対象とした成長ベース迅速微生物学的方式の検証
Celsis RMD System に関する評価方法
Celsis RMD System では、ATP測定法の妥当性を評価できるプロトコールを提供しています。
測定データの管理
Celsis RMD Systemの解析ソフトウェアは、米国食品医薬品局(FDA)の「21 CFR Part 11」およびEU の「Annex 11」に準拠しており、電子記録および電子署名が改ざんされないこと、かつ変更履歴が残るようになっております。