ラーニングコーナー
2022/03/02
よくある質問 ~CFUアッセイ~
- 用途別細胞培養
In vitroコロニー形成単位(CFU)アッセイは、造血幹細胞および前駆細胞(HSPC)の機能を評価するために使用され、in vivo生着モデルとよく相関することが示されています。
ここでは、Jackie Damen博士(STEMCELL Technologies社 シニアサイエンティフィックアドバイザー)が、MethoCult™を用いた造血CFUアッセイに関するよくある質問(FAQ)に回答しています。
本稿の内容は、STEMCELL Technologies社ウェブサイトの記事 Frequently Asked Questions on Performing the CFU Assay に基づいております。
試薬の準備でよくある質問
試薬の準備の際によくある質問にお答えします。
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どのMethoCult™培地組成を使用すればよいですか?
MethoCult™製品ラインは、メチルセルロース培地と、事前に適格性を検査済みの血清およびサイトカインを含むサプリメントで構成されており、ヒトまたはマウスの造血コロニーの成長に最適化されています。MethoCult™ H4034 Optimumは、ヒト骨髄(BM)、臍帯血(CB)、および末梢血単核細胞(PB MNC)に由来する骨髄系および赤血球系前駆細胞のために最適な選択肢です。また、必要に応じて、血清フリーの組成やサイトカインフリーの培地もご提供しております。
MethoCult™メチルセルロースベースの培地を使用するには、どのように準備すればよいですか?
濃度とポリマーサイズは、MethoCult™の粘度に影響を与える可能性があります。 細胞培養の場合、粘度は細胞分裂中の細胞の動きを制限しないように十分に低くする必要があります。したがって、MethoCult™を100 mlボトルから分注する前に、解凍後のボトルを十分に混合することが重要です。
以下のプロトコールもご参照ください。
10倍濃縮の細胞懸濁液(生細胞)を調製し、播種用に分注したMethoCult™培地に添加する必要があります。
MethoCult™に過剰な容量を添加すると、半固形組成が希釈されすぎる可能性があります。
私のMethoCult™培地は解凍後に、黄色または紫色に見えます。まだ使用できますか?
はい、解凍後に黄色または紫色に見えるMethoCult™培地は使用できます。これは、輸送中または保管中に培地のpHが変化したことを示しますが、培地が-25℃から-15℃の推奨温度範囲で保管され、ラベルに示されている有効期限の前に使用される限り、性能に影響はありません。
ボトルを解凍し、CFUアッセイセットアップの推奨プロトコールに従ってください。
培養物を5% CO2条件下でインキュベートするとpHは調整されます。
培地に抗生物質を添加する必要はありますか?
いいえ。無菌培養を維持するには無菌操作で十分です。ただし、必要に応じて、抗生物質(ペニシリン/ストレプトマイシンなど)または抗真菌剤(アンホテリシンBなど)をメチルセルロース培地に添加することができます。
低接着性のディッシュがCFUアッセイにとって非常に重要なのはなぜですか?
線維芽細胞などの接着細胞はコロニーの成長を阻害し、コロニー可視化の邪魔になる可能性があるため、低接着プレートの使用が重要です。培養物のtriplicateまたはduplicateを設定するには、MethoCult™完全培地の分注をどのように準備すればよいですか?
MethoCult™培地の分注は、MethoCult™完全培地の100 mLボトルから調製できます。分注は、ボトルの凍結融解を繰り返さないために強く推奨いたします。メチルセルロースベースの培地を分注するには、分注される量が不正確になる血清ピペットを使用しないでください。粘性のあるメチルセルロース培地を正確に分注し、針刺し損傷を防ぐために、シリンジ(3 mLまたは6 mL)および16ゲージのブラントエンドニードル(ST-28110)を使用する必要があります。
Duplicate培養の場合は、チューブあたり3 mLを分注します。Triplicate培養の場合は、チューブあたり4 mLを分注します。
細胞サンプルの準備でよくある質問
細胞サンプルの準備の際によくいただく質問にお答えします。
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CFUアッセイのセットアップ前に赤血球(RBC)を除去することが重要なのはなぜですか?
サンプルに多くのRBCが存在すると、粒状の強いバックグラウンドが生じる原因となり、STEMvisionによる検出でも同様の問題が生じる可能性があるため、CFUアッセイのセットアップ前にRBCをディプリーションすることが重要です。以下の技術マニュアル中、Section 7で説明されているように、RBCを除去してください。トリパンブルーは生細胞と死細胞を区別するために最も一般的に使用される方法ですか、それとも他の染色方法を推奨しますか?
トリパンブルーによる細胞生存率の評価は、細胞培養で長年にわたって使用されており、手動(血球計算盤を使用)または自動セルカウンターを使用して実施できます。トリパンブルーを使用して手動で決定される生存率はより主観的であり、これは、7AADのようにより感度が高く堅牢な核色素と比較すると、排除色素である事が一因です。生存率評価用に推奨される特定の色素について、この分野で一致した見解はありませんが、トリパンブルーは通常、7AADおよびAO/PIと直接比較した場合に、より高い生存率評価をもたらすと理解されています。
さまざまな生存率の染色方法が使用可能であり、機能的な効力を確認するために通常は追加のアッセイ による検証が必要になります。
セットアップと培養のよくある質問
セットアップと培養についてよくいただく質問にお答えします。
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CFU培養の開始に必要な細胞数はどれくらいですか?
正確な定量のためには、CFU培養の開始に使用する細胞数と、得られるコロニー数との間に線形関係がなければなりません。コロニーが多すぎる(オーバープレーティング)と、必須栄養素の枯渇、pHの変化、細胞代謝産物の蓄積により、前駆細胞の増殖が阻害されます。
オーバープレーティングはまた、個々のコロニーの識別が難しいことからカウントエラーを引き起こします。コロニーが少なすぎる(アンダープレーティング)と、統計的に不正確なデータが得られる可能性があります。
細胞の播種濃度は、動物種と細胞ソースに依存します。これはドナーと細胞ロットによって異なる可能性があることから、CFU頻度を線形範囲内かつCFUアッセイの検出限界内に確保するために、一定の濃度範囲内で2〜3個の細胞濃度を取って播種することを推奨いたします。詳細な手順については、以下の技術マニュアル中、Table 6および7をご参照ください。
それでもコロニーが多すぎる(100を超える)場合は、推奨範囲の下限を下回る濃度で播種することも可能です。
播種に血清ピペット(セロロジカルピペット)を使用できますか?
いいえ、CFUアッセイの細胞を播種するためには血清ピペットを使用しないでください。メチルセルロースは粘稠な溶液であり、ピペットチップの壁に培地が付着するため、ピペットを使用して正確に分注することはできません。
これは、アッセイの不正確さ(細胞数の減少、ディッシュ側面からの培地後退)につながる可能性があります。
MethoCult™を正確に分注するには、16ゲージのブラントエンドニードル(ST-28110)と3 ccシリンジ(ST-28230)の組み合わせを推奨します。
MethoCult™培地がウェルの表面全体を覆っていないのはなぜですか?
MethoCult™は粘性があるため、液体培地とは異なり直ちにウェルの底を覆わず、表面張力によりドームを形成します。細胞とMethoCult™を広げるには、ディッシュまたはプレートを緩やかに傾けて旋回し、容器の端まで培地(1.1 mL)を層にして均等に配分します。
細胞を加えたMethoCult™のチューブをボルテックスした後、播種するまでどのくらい待つ必要がありますか?
MethoCult™と細胞の混合物は、気泡の大部分が液面に上がったらすぐに播種できます(ボルテックスの約5分後)。細胞はこの混合物中で培養されるため、必要に応じて細胞をチューブ内に室温で数時間放置することが可能で、その後のコロニー形成にも悪影響を与えません。チューブを一定時間放置した場合は、播種前に穏やかにボルテックスしてください。
MethoCult™培地の流動性や、コロニーの浮遊または不鮮明さが見られるのはなぜですか?
以下のように、いくつかの理由が考えられます。●解凍したMethoCult™培地が、チューブに分注する前に完全に混合されていませんでした。
分注前に完全に混合されていないMethoCult™培地は、チューブ内の培地の粘度に変動をもたらす可能性があります(つまり、一部のチューブに低粘度、一部のチューブに高粘度の培地が含まれます)。
●大量の成分または細胞がMethoCult™に添加されました。
MethoCult™の組成は、これらを10分の1の比率で添加することでコロニー形成に最適な粘度になります。そのため、10分の1を超える希釈では、個別のクラスターとして形成されないコロニーが生じ、ディッシュを動かした際にディッシュ全体に「流れる」ように見えます。
逆に、比率が10分の1未満の場合、コロニーは非常にコンパクトになり、細胞の「タイトな」ボールのように見えます。
●細胞とMethoCult™培地を含むチューブが、播種前に完全に混合されていませんでした。
培養物が汚染されたように見える場合、何かできることはありますか?
いいえ、汚染された培養物は救えません。汚染が目に見える場合、抗生物質の添加によって培養物を救うことはできません。バクテリアと酵母は、栄養素を枯渇させるか、有毒物質を放出することにより、コロニー形成を阻害します。
なぜ私の培養物は乾いているのですか? 培養物が脱水状態になっているかどうかはどうすればわかりますか?
脱水の問題の最も一般的な原因は、不適切な培養設定、特に水皿を使用していないこと、およびインキュベーター内の湿度が低すぎることです。培養期間中に高湿度(≥95%)が維持されない場合、培養物の脱水が起きる可能性があり、また湿度のわずかな変化でもコロニーの成長に影響を与える可能性があります。
通常、脱水状態の培養物には、顕微鏡下で斑点やひび割れが見られます。肉眼で横から見た場合、培養物は通常より薄く見えます。
また、ウェルの一方の端から始まるきめの粗い勾配を観察することもできます。
脱水は、コロニーの非検出(通常、非常にザラザラした脱水領域で)および/または偽陽性カウント(通常、脱水から正常領域への移行部分に沿ったGMコロニー)につながる可能性があります。
以下の手順に従って、脱水の問題を回避してください。
コロニー同定およびカウントのよくある質問
コロニー同定およびカウントについてよくいただく質問にお答えします。
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同じサンプルのtriplicateでコロニー数が不均一になるのはなぜですか?
同じサンプルのtriplicateで不均一なコロニー数が見られる場合は、サンプルを正しくボルテックスしていなかった可能性があります。細胞をMethoCult™培地に加えた後、均等に分配するために少なくとも4秒間ボルテックスすることが非常に重要です。
CFUアッセイのスコアリングは主観的ですか?
はい、CFUアッセイのスコアリングは主観的になりえます。CFUコロニーをスコアリングする際に遭遇する最も一般的で特に困難な現象として、複数の焦点またはクラスターを持つコロニーの存在があります。
これは、別々のコロニーとしてスコアリングできるため、合計カウントを誤ってより高いCFU数に歪めます。
このことが、HSPC移植効力の過大評価につながる可能性があります。
逆に、播種濃度が高いと、コロニーが重なり合って未発達になり、低いCFU数につながる可能性があります。
トレーニングは、コロニー数と各コロニータイプ系統の識別の両面で、手動カウント実施者間の一貫性を向上させることが示されています。
CFUアッセイ標準化のためのトレーニングとして、どなたでもご参加いただけるプロフィシエンシーテストがございます。
コロニーを数えると乗り物酔い(と同様の状態)になります。どうすればこの問題を軽減できますか?
初めてCFUアッセイのコロニーカウントを行う人が、乗り物酔いを経験するのは一般的です。これを回避するには次のような方法があります。
●顕微鏡を覗く時間を、一回に1時間だけに制限して始めます。
●ステージコントロールノブをディッシュ全体にわたって左右に動かすのではなく上下に動かして、縦の列で数えます。
●ゆっくり始める:1時間以内のカウントから始めます。練習すれば、一回に数時間コロニーをカウントできるようになります。
●休憩!自信がついてきたとしても、1時間おきに休憩を取り、ストレッチをしたり、遠くを見たりして目をリラックスさせることが重要です。
CFU数を正確に再現性良くカウントする方法を学ぶにはどうすればよいですか?
CFU数の正確なカウントを学ぶための最良の方法は、たくさん練習することです!カウントを始めるのに役立つヒントはこちらです。●最初は、週に数日、1日に1〜2時間、さまざまなCFUタイプを認識し正確に数える方法を学びましょう。同じ培養物を違う日にカウントしましょう。
培養物を33℃、5%CO2、湿度95%以上に置くと、最初の培養期間からさらに数日間は良好な形態が維持されます。
●習熟した同僚とカウントして結果を比較しましょう。
●STEMCELL Technologies社のプロフィシエンシーテストに参加しましょう。
●お問い合わせください!コロニーの写真などの情報をもとにコロニーを正しく培養およびスコアリングしていることを確認いたします。
CFUアッセイによって、分化した顆粒球系統のサブセットを特徴づけることは可能ですか?
顆粒球系統は、好中球、好塩基球、好酸球の3種類の成熟細胞で構成されます。末梢血中のこれらの頻度を真に特定する唯一の方法は、ヘマトキシリンとエオシン(H&E)による組織学的染色と、サイズ、色、および核の形状に基づいてこれら3タイプを区別する形態学的特徴の評価に基づいています。CFUアッセイでは、前駆細胞タイプの同定に役立つ成熟細胞のサイズしかわからず、核の形状を視覚化することはできません。核の形状は、例えば、顆粒球と単球の違いを決定する上で重要です。CFU-GMコロニー内の細胞の組成を特定する唯一の方法は、コロニーを回収し、サイトスピンとH&E染色の後にコロニー内の成熟細胞を評価することです。
ただし、ほとんどのコロニーは未成熟細胞と成熟細胞の不均一な混合物であり、これは前駆細胞の系列分化能を表しています。
あるいは、個々のコロニーから回収した細胞を、さまざまな成熟細胞タイプに特徴的な細胞表面マーカーで染色することもできます。ただし、このアプローチでは多くの場合、複数の表面マーカーを染色して決定する必要があります。歴史的には、組織学的染色、フローサイトメトリーによる細胞表面発現、およびサイトカイン要件のすべてが、系統特異的な前駆細胞タイプを確認するために使用されてきました。
ヒトCFU培養物を14日より長く放置できますか?
ヒトCFU培養物は14日より長く放置しないでください。MethoCult™ H4435 Enrichedなどの標準的なMethoCult™培地中のすべてのヒトCFU培養物は、13〜15日目頃にカウントする必要があります。培地中の栄養分がこの後に枯渇することが主な原因となり、細胞は培養物中に長くとどまることができません。同定したい原始前駆細胞を含め、すべての細胞は死に始めます。 さらに、15日より長く経過したCFU培養物のコロニーを解析することも、以下の理由から推奨いたしません。
●ミエロイドコロニーで一般的なように、コロニーが成長し続けることで過密、融合、および重複が生じ、正確に同定し数えることが困難になります。
●小さな赤血球コロニーで一般的なように、死んで崩壊し始めます。
ただし、推奨期間(13〜15日)内にCFU培養物をカウントできず、標準的なMethoCult™培地を使用している場合は、CFU培養トレイを33℃、5% CO2(湿度95%)のインキュベーターにさらに1〜2日間移してください。より低い温度は、細胞死を防止したり、増殖を阻害したりすることはありませんが、コロニーを正しくカウントできるようにコロニーの形態を維持するのに役立ちます。