研究者の声
2018/12/18
がん免疫療法における新たな細胞移入療法の開発にベリタス取扱製品を使用 研究者の声【10】
研究者紹介
慶應義塾大学 医学部 微生物学・免疫学教室(吉村研究室)助教
近藤 泰介 先生
※ 所属や役職等は掲載当時のものです
研究内容
当研究室では分子、細胞レベルで免疫応答を理解し、これを制御することでアレルギーや自己免疫疾患などの免疫疾患の治療法を開発することを目指しています。
私はT細胞を機能的なメモリーT細胞へ変化させることによって、がん免疫療法へ応用する研究を行っております。
インタビュー
1.Dyanabeadsを用いてどのような研究を行っていらっしゃいますか?
最近、がん患者の腫瘍組織などから分離したがんに特異的なT細胞を試験管内で大量に培養し、患者に戻す療法に関する論文を発表しました。
この研究の中で、末梢血中のCD8+を活性化する目的でDynabeads Mouse T-Activator CD3/CD28を使用しています。
【発表論文】
- Kondo et al., Generation and application of human induced-stem cell memory T cells for adoptive immunotherapy. Cancer Science. 2018 Jul;109(7):2130-2140. PMID: 29790621
- Kondo et al., Notch-mediated conversion of activated T cells into stem cell memory-like T cells for adoptive immunotherapy. Nature Communications. 2017 May 22;8:15338. PMID: 28530241
【発表内容】
幹細胞様メモリーT細胞(TSCM)は、その名の通りメモリーT細胞の幹細胞であり、ナイーブT細胞マーカーであるCD45RA、CCR7、CD62Lを発現しています。
この細胞は長寿命であり私共の研究結果ではマウス体内で5か月以上生存できることを確認しています。さらに高い増殖能を持つことが知られています。
私たちは、「OP9-Notchシステム」(図1)を開発により試験管内においてTSCMを誘導することに成功し、この誘導された細胞をiTSCMと名付けました(文献1)。研究過程では、OP9細胞との共培養のプロセスにおいても条件検討を行い、改良を行いました。
このシステムにより、Epstein-Barrウイルス特異的なセントラルメモリーT細胞から、効率よくiTSCMを産生することができます。
さらに、iTSCMが優れた抗腫瘍活性を示すことを示しました(文献2)。
しかしながら、がん細胞の根絶まではいたっておらず、さらなる改良を目指しています。
図1:OP9-Notchシステムの概要(文献2より)
図2:iTSCMが示す抗腫瘍活性(文献2より)
EBVによって形質転換したヒトB細胞腫を免疫不全マウスに移植し、その後にEBV特異的なiTSCMや他のメモリーT細胞サブセットを移入することでiTSCMの治療効果を検討いたしました。
2.上記の実験におきまして、Dynabeadsを選ばれたのはどのような理由でしょうか?また、ご使用されてのご感想はいかがでしょうか?
抗体を培養プレートに固相化して用いる方法と比較して、Dynabeads T-activatorは、より効率よくT細胞を活性化するという効果が得られています。
準備の手間が少なくて済み、操作も非常に簡単です。実験の際に迅速かつ快適に使用できています。