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研究者の声

2020/05/20

ニッケルアレルギー発症に関わるニッケル結合性樹状細胞の同定 研究者の声【21】

  • 細胞分離

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東北大学大学院の黒石 智誠 先生に、最近投稿された論文で使用したEasySep製品に関してお話を伺いました。

研究者の紹介

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東北大学大学院歯学研究科

口腔生物学講座口腔分子制御学分野

黒石 智誠 先生

※ 所属や役職等は掲載当時のものです

研究内容

論文タイトル

Migratory dendritic cells in skin-draining lymph nodes have nickel-binding capabilities

論文要旨

ニッケル(Ni)は最も代表的な金属アレルゲンであり、Th1依存型IV型アレルギーを誘発します。
局所の皮膚においては、抗原を取り込んだ表皮ランゲルハンス細胞や真皮樹状細胞(DC)などの抗原提示細胞が所属リンパ節へ移動し、免疫応答を誘導します。
しかし、Niの抗原提示に関して、その詳細は明らかになっていません。
本論文では、Ni特異的蛍光プローブであるニューポートグリーンを使用して、マウスDCのNi結合能力を解析するとともに、Ni処理を行ったDCをNi感作マウスへ皮内接種することにより、Niアレルギーの惹起能を評価しました。

その結果、皮膚所属リンパ節において、MHCクラスIIhi CD11cint遊走性DCのNi結合能は、MHCクラスIIint CD11chi常在DCおよびCD11cint PDCA1+ MHCクラスIIint B220+形質細胞様DCよりも有意に強いことが明らかになりました。
また、皮膚所属リンパ節や顎下リンパ節の遊走性DCは、腸間膜および腸骨リンパ節の遊走性DCよりも有意に強いNi結合能を示しました。

IL-1βはNiアレルギーの発症に関わる炎症性サイトカインです。
このIL-1βの皮内接種により、ランゲルハンス細胞や真皮DCが活性化され、有意に強いNi結合能を示しました。また、IL-1βとNiの皮内接種により、Niと結合したランゲルハンス細胞が所属リンパ節中に検出されました。

さらに、皮膚所属リンパ節から採取したDCをin vitroでNiと反応させた後、Ni感作マウスに皮内接種することにより、Niアレルギー性炎症が惹起されました。

これらのことから、皮膚所属リンパ節の遊走性DCが強力なNi結合能を有し、Niアレルギーを誘発することが明らかになりました。

論文中でのEasySep活用事例

EasySep Mouse Pan-DC Enrichment Kit(製品コード:ST-19763)を用いてリンパ節からDCを精製しました。
このDC画分をin vitroでNiと反応させた後、Ni感作マウスの耳介に皮内接種しアレルギー性炎症(耳介の腫脹)を解析しました。

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図1 皮膚所属リンパ節(Skin-draining LN cells)およびEasySep Mouse Pan-DC Enrichment Kitによる精製DC画分(Pan-DC fraction)のフローサイトメトリー解析

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図2 in vitroでNiと反応させた皮膚所属リンパ節(Skin LNs)および腸間膜リンパ節(Mes LNs)由来DC画分をNi感作マウスの耳介に皮内接種した。Niアレルギー性炎症の指標として耳介の腫脹(Ear swelling)を測定した。Ni結合能の強い皮膚所属リンパ節由来DCで有意な耳介の腫脹が誘導された。

EasySepを選んだ目的

マウス組織から各種細胞を分離する目的でEasySepを使用しています。 操作が簡便で、カラムを用いる製品と比較して細胞へのダメージが少ないことが利点です。

今後の展望

金属アレルギーの歴史は古く、19世紀末にはNiによる接触性皮膚炎が報告されています。
その一方、病態や発症機序には不明な点も多く、「抗原金属の除去」という古典的とも言える対処法が標準となっています。
今後は、マウスモデルを用いた基礎研究を通じて、金属アレルギーの新たな予防・治療法の開発に貢献していきたいと考えています。

参考文献

Kuroishi et al., 2020. Migratory dendritic cells in skin-draining lymph nodes have nickel-binding capabilities. Scientific Reports 10:5050

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