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研究者の声

2018/11/15

Dynabeads Protein A/Protein G/Mouse IgGを用いたChIP法 研究者の声【6】

研究者紹介

岸 雄介 先生

東京大学大学院 薬学系研究科 分子生物学教室 講師

写真:東京大学大学院 薬学系研究科 分子生物学教室

※ 所属や役職等は掲載当時のものです

1.研究室紹介

東京大学大学院薬学系研究科分子生物学教室では、神経発生とウィルス感染応答を軸に、多様な基礎生物学研究に取り組んでいます。
その中で私たちのグループは、神経発生期におけるエピジェネティクス、クロマチンの変化の重要性を調べています。

我々の思考や行動を司る脳で機能を発揮するニューロンやグリア細胞は、全て発生期に神経幹細胞から分化することで産まれます。
神経幹細胞がどの細胞に分化するかを決める機構は、最終的な脳におけるそれぞれの細胞種の数を決定することにつながることから、厳密に制御されていると考えられます。
私たちは、神経幹細胞の分化運命の決定機構において、ポリコーム群タンパク質やHmgaタンパク質などのエピジェネティクス、クロマチン制御因子が重要な役割を果たすことを明らかにし、現在もその作用機序などを調べています。

また、脳で最も重要な働きをする素子であるニューロンは、神経幹細胞から産生されたのち、劇的な形態変化などを起こして機能を獲得していきます。
我々は、この過程でもエピジェネティクスやクロマチン構造の変化が重要であることを示唆する結果を得ており、その役割を調べています。

我々の研究の特徴は、in vitroだけでなくin vivoでの変化を解剖学と生化学の両面から明らかにすべく、必要な手法を開発している点にあります。
免疫染色などでin vivoでの変化を調べた上で、その細胞をFACSなどを用いて生体内から直接回収し、今回紹介するChIPなどの生化学的手法にてエピジェネティクス、クロマチンの変化を調べています。

2.Dynabeadsを用いての実験

生体内からFACSにて回収した、あるいはin vitro初代培養を行った神経幹細胞やニューロンを用いてヒストン修飾、転写因子のChIPを行っています。
当研究室では主にProtein AビーズはRabbit抗体を、Protein GビーズはGoat抗体を、またMouse IgGビーズはMouse IgG抗体を用いてChIPするときに使用しています。

3.Dynabeadsを選んだ目的と理由

もともと別の研究室からDynabeadsがChIP解析に適していると勧められ、Protein Aビーズを用いました。
良い結果を得られたので継続して使用しています。
その後、抗体-ホストの最適な組み合わせを考慮し、Protein Gビーズやmouse IgGビーズも用いるようになりました。

4.実際に使用しての感想

抗体にもよりますが、Dynabeadsを用いた解析では他社磁気ビーズと比較して強いシグナルを得られています。
また、コストも他社ビーズと比較して10%程度安いです。
実験結果とコストパフォーマンスの両面で満足しています。

5.プロトコール紹介

【1】 IPされやすい抗原に対するプロトコル(抗原量が多い、DNAとの結合が強い、免疫反応が強い、非特異反応が多いなど)

抗体例:H3K27me3抗体(Millipore, #07-449)、H3K27ac抗体(MBL, MABI0309)

<Fixation>

↓ 細胞を培地、PBSなどで懸濁

↓ Add PFA (final 0.5%)

↓ 室温 10 min

↓ Spin, 3000 rpm, 5 min

↓ PBS wash

↓ Spin, 3000 rpm, 5 min

↓ Remove sup

↓ Freeze with Liquid N2

↓ -80℃

Day 1
<Beadsのblocking>

↓ Beads 20 ml/IP (×sample数) ml + pre-clear用 20 μl Beads/sampleをlow-binding tubeへ

↓ 0.5% BSA/PBSでwash×1

↓ 250 mlの0.5% BSA/PBSでsuspend

↓ 4℃, rotation, 1 h (~O/N)

6.今回ご紹介いただいた手法を用いた論文

  1. Hirabayashi, Y., Suzki, N., Tsuboi, M., Endo, T. A., Toyoda, T., Shinga, J., Vidal, M. and Gotoh, Y. (2009). Polycomb limits the neurogenic competence of neural precursor cells to promote astrogenic fate transition. Neuron 63, 600–613. doi:10.1016/j.neuron.2009.08.021.
  2. Morimoto-Suzki, N., Hirabayashi, Y., Tyssowski, K., Shinga, J., Vidal, M., Koseki, H. and Gotoh, Y. (2014). The polycomb component Ring1B regulates the timed termination of subcerebral projection neuron production during mouse neocortical development. Development 141, 4343–4353. doi:10.1242/dev.112276.
  3. Tsuboi, M., Kishi, Y., Kyozuka, W., Koseki, H., Hirabayashi, Y. and Gotoh, Y. (2018). Ubiquitination-independent repression of PRC1 targets during neuronal fate restriction in the developing mouse neocortex. Developmental Cell, in press
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(左)東京大学大学院 薬学系研究科 分子生物学教室 講師 岸先生

(右)株式会社ベリタス バイオサイエンス本部 技術グループ 丹野

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