研究者の声
2017/09/12
Dynabeads Protein Gを用いたUV crosslinking and Immunoprecipitation 研究者の声【1】
東京大学大学院理学系研究科 生物科学専攻 塩見研究室におきまして、ベリタスが取り扱っているDynabeads™ Protein G磁気ビーズを用いたCrosslinking and Immunoprecipitation(CLIP)についてお話を伺いました。
研究者紹介
室田 友紀子 先生
東京大学大学院理学系研究科 生物科学専攻 塩見研究室 特任研究員
※ 所属や役職等は掲載当時のものです
研究トピック・内容
研究トピック
- piRNA生合成に関わる細胞質構造体Yb body及びFlam bodyの解析
- 研究キーワード: RNA / ゲノム / RNAサイレンシング
研究内容
生殖細胞特異的に発現する小分子RNAであるpiRNAは、利己的遺伝子であるトランスポゾンから自己ゲノムを守っています。
piRNAが産生されなくなると、トランスポゾンの抑制が解除され、卵・精子形成不全や不稔が引き起こされます。
その為、有性生殖を行う生物種は、この脅威から逃れる為にpiRNAによるトランスポゾン抑制機構を獲得したと考えられます。
そこで私達は、piRNAの生合成及びトランスポゾン抑制機構に焦点を当て、研究を進めています。
インタビュー
研究室でDynabeads Protein G を用いる研究にはどのようなものがありますか?
- 共免疫沈降による、タンパク質の相互作用解析、新規相互作用因子の探索
- Crosslinking and Immunoprecipitation(CLIP)による、RNA binding proteinのRNA結合能解析
- CLIP
- RIP
- piRNAの単離
- Flag抗体とFlag peptideを用いたFlag tag付きタンパク質の精製
Dynabeads Protein Gを選ばれた目的と理由を教えてください
- 目的:タンパク質に結合するタンパク質やRNAを綺麗に、かつ再現よくとりたい
- 理由:バックグラウンドが少なく、再現よく結果を得られるため
Dynabeads Protein Gを使うことでどんなメリットがありましたか?
- バックグラウンド少なく、再現の良い結果を安定して得られるようになった
- 洗浄が簡便
- CLIPやRIPに関しては、目的タンパク質単体を綺麗にとってくることができた
実験結果
Ybは、piRNAを合成の場である細胞質内顆粒体Yb body形成に必須のタンパク質です。
YbはDEAD box helicaseを持っていることが知られており、DEAD-box helicase持っている有名なタンパク質であるVasaと配列を比較してみると、
保存されるアミノ酸が存在していました。
保存されたアミノ酸のうち、VasaでRNAやATPの結合に必須であると先行研究で示されたアミノ酸に相当するYbのアミノ酸を変異させて、
そのRNA結合能を本稿に記した方法を用いて調べました。
その結果、399番目のグルタミンをアラニン(Q399A)に、DEAD box内に存在する537番目のアスパラギン酸をアラニンに置換した変異体では、
YbはRNAと結合できないことが明らかになりました。
(上段:protein検出用のWB、下段:CLIP)
プロトコール
Crosslinking and Immunoprecipitation(CLIP)のプロトコールを紹介いたします。
使用した試薬
- Dynabeads protein G
- Anti-Yb antibody
- IP Buffer:50 mM HEPES pH7.5, 150 mM NaCl, 0.5% NP-40, 2 mM EDTA, 0.5 mM DTT, 2 µg/mL Leupeptin, 2 µg/mL Pepstatin A, 0.5% Aprotinin
- IP wash Buffer:50 mM HEPES pH7.5, 300 mM NaCl, 0.05% NP-40, 0.5 mM DTT, 2 µg/mL Leupeptin, 2 µg/mL Pepstatin A, 0.5% Aprotinin
- High salt wash Buffer:50 mM HEPES pH7.5, 500 mM NaCl, 0.05% NP-40, 0.5 mM DTT, 2µg/mL Leupeptin, 2 µg/mL Pepstatin A, 0.5% Aprotinin
- Dephosphorylation Buffer:NEBuffer 3(New England Bioweb)
- Phosphatase wash buffer:50 mM Tris-HCl pH7.5, 20 mM EGTA, 0.5% NP-40
- PNK Buffer without DTT:50 mM Tris-HCl, pH7.5, 51 mM NaCl, 10 mM MgCl2
- RNase T1(Thermo Fisher Scientific)
- CIP:Alkaline Phosphatase(New England Bioweb)
- PNK:T4 Polynucleotide Kinase(New England Bioweb)
方法
- 内在YbをsiRNAによりノックダウンした後にmyc-Yb(wt または 3種のmutant)を強制発現させた、Ovarian Somatic Cells(OSC)をUVでクロスリンク(Stratalinker 1800, 100 mJ/cm2 x 2回 of 254nm UV)
- クロスリンクした細胞を回収
- 回収した細胞をIP Buffer 500 µLに溶解
- RNase T1(0.1 U/µL)を加えて、室温で15分間インキュベート
- 遠心を行い、上清をあらかじめ抗体と反応させておいたDynabeads(Dynabeads Protein G 50 µLをanti-Yb antibody 10 µgと室温で30分反応)と混合
- 4℃で2時間30分ローテーションしながらインキュベート
- IP wash Bufferで3回洗浄
- 50 µLのIP wash BufferにDynabeadsを懸濁し、RNase T1(5 U/µL)を加え、室温で15分間インキュベート
- High salt wash Bufferで3回洗浄
- 50 µLのDephophorylation BufferにDynabeadsを懸濁してCIP処理、37℃で10分間インキュベート
- Phosphatase wash Bufferで2回洗浄
- PNK Buffer without DTTで5回洗浄
- PNK処理(1/50 PNK, 1/10 PNK Buffer, 1/250 32P-ATP)、37℃で30分間インキュベート
- PNK Buffer without DTTで5回洗浄
- SDS PAGE loading Buffer(1/4 LDS Sample Buffer(Novex), 50 mM DTT)10 µLに懸濁し、70℃で10分インキュベート
- NuPAGE 4-12% Gel(Thermo Fisher Scientific)により展開し、検出