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研究者の声

2017/12/12

Dynabeads Protein Gを用いたenChIP法 研究者の声【3】

弘前大学大学院医学研究科 ゲノム生化学講座におきまして、ベリタスが取り扱っているDynabeads™ Protein G磁気ビーズを用いたenChIP法(engineered DNA-binding molecule-mediated chromatin immunoprecipitation)についてお話を伺いました。

研究者紹介

藤田 敏次 准教授、藤井 穂高 教授

弘前大学大学院医学研究科 ゲノム生化学講座

※ 所属や役職等は掲載当時のものです

 

研究内容

エピジェネティック制御や転写などのゲノム機能の分子機構の解析は、これまで試験管内での生化学的解析や遺伝学的解析によって進められてきました。
しかし、細胞内での生理的環境を反映していないことに加え、解析に長い時間を必要としました。
当研究室では、我々が開発した遺伝子座特異的生化学的ゲノム機能解析法(遺伝子座特異的クロマチン免疫沈降法)を用いて、ゲノム機能発現調節機構の生化学的解析を進めています。

 

インタビュー

研究室でDynabeads Protein G磁気ビーズを用いる研究にはどのようなものがありますか?

  • 遺伝子座特異的クロマチン免疫沈降法(Locus-specific ChIP法)による標的ゲノム領域の特異的単離
  • 単離ゲノム領域に結合している分子の網羅的同定

 

Dynabeads Protein Gを選ばれた目的と理由を教えてください

SepharoseやAgaroseビーズと比較して、扱いやすく、また、非特異的吸着が少ないためです。

 

Dynabeads Protein Gを使うことでどんなメリットがありましたか?

実験操作の際のサンプルのロスが少なく、また非特異的吸着が少なかったため、標的ゲノム領域を効率よく回収することができました。

 

実験結果

Locus-specific ChIP法の1つであるenChIP法(研究に関する論文3、6、7)を用いて、ヒト細胞株HT1080においてIFNγ刺激後にIRF-1遺伝子プロモーター領域にリクルートされる蛋白質の網羅的同定を行った。IRF-1遺伝子プロモーター領域を、inputに対して10%以上の効率で特異的に単離することができ、また、結合蛋白質の同定にも成功した(下図および研究に関する論文5)。
他にも、標的ゲノム領域に結合しているRNA(研究に関する論文4)や他のゲノム領域(研究に関する論文1、2)の網羅的同定にも成功している。

1020_enChIP_Fig1.jpg
1020_enChIP_Fig2.jpg

(出典:Fujita, T. and Fujii, H. (2014) Identification of proteins associated with an IFNγ-responsive promoter by a retroviral expression system for enChIP using CRISPR. PLOS ONE, 9, e103084.)

 

操作プロトコールの紹介

enChIP法のプロトコール概要

  1. 標的ゲノム領域のタグ付け:標的ゲノム領域をタグ付けするため、標的ゲノム領域内の塩基配列を特異的に認識する人工DNA結合分子(TAL蛋白質やDNA切断活性欠損型のCRISPRなど。必要に応じて、エピトープタグを融合)を細胞内に発現させる。
  2. 断片化クロマチンの調整:細胞をクロスリンク処理した後、ゲノムDNAをソニケーションなどで断片化する。
  3. 標的ゲノム領域の単離:エピトープタグに対する抗体(あるいは人工DNA結合分子に対する抗体)を結合させたDynabeads Protein Gを、断片化したクロマチンと混合する。Dynabeads Protein Gを洗浄、回収することで、人工DNA結合分子が結合したゲノム領域(標的ゲノム領域)を単離する。Dynabeads Protein Gから単離したゲノム領域を溶出する。
  4. 標的ゲノム領域結合分子の解析:質量分析や次世代シーケンスによって、標的ゲノム領域に結合している蛋白質・DNA・RNAを網羅的に解析する。

 

enChIP法を用いた研究に関する論文

  1. Fujita, T., Kitaura, F., Yuno, M., Suzuki, Y., Sugano, S., and Fujii, H. (2017) Locus-specific ChIP combined with NGS analysis reveals genomic regulatory regions that physically interact with the Pax5 promoter in a chicken B cell line. DNA Res., 24, 537-548.
  2. Fujita, T., Yuno, M., Suzuki, Y., Sugano, S., and Fujii, H. (2017) Identification of physical interactions between genomic regions by enChIP-Seq. Genes Cells, 22, 506-520.
  3. Fujita, T., Yuno, M., and Fujii, H. (2016) Efficient sequence-specific isolation of DNA fragments and chromatin by in vitro enChIP technology using recombinant CRISPR ribonucleoproteins. Genes Cells, 21, 370-377.
  4. Fujita, T., Yuno, M., Okuzaki, D., Ohki, R., Fujii, H. (2015) Identification of non-coding RNAs associated with telomeres using a combination of enChIP and RNA sequencing. PLOS ONE, 10, e0123387.
  5. Fujita, T. and Fujii, H. (2014) Identification of proteins associated with an IFNγ-responsive promoter by a retroviral expression system for enChIP using CRISPR. PLOS ONE, 9, e103084.
  6. Fujita, T., Asano Y., Ohtsuka J., Takada Y., Saito K., Ohki R., and Fujii, H. (2013) Identification of molecules associated with telomeres isolated by enChIP. Sci. Rep. 3, 3171.
  7. Fujita, T. and Fujii, H. (2013) Efficient isolation of specific genomic regions and identification of associated proteins by engineered DNA-binding molecule-mediated chromatin immunoprecipitation (enChIP) using CRISPR. Biochem. Biophys. Res. Commun., 439, 132-136.

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