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研究者の声

2019/12/19

CDK8/19阻害剤によるFoxp3陽性細胞の誘導でDynabeads使用 研究者の声【14】

  • 細胞分離
  • 用途別細胞培養

研究者紹介

三上 統久 先生

レグセル株式会社 研究開発部

大阪大学 免疫学フロンティア研究センター実験免疫学分野

京都大学 ウイルス再生医科学研究所 生体再建学分野

※ 所属や役職等は掲載当時のものです

研究内容

制御性T細胞(Treg)は転写因子Foxp3を発現する抑制性のCD4陽性T細胞サブセットであり、自己免疫疾患の抑制や抗腫瘍免疫活性化を目的とした治療標的としても注目されている。
特に炎症性免疫疾患の治療に関して、抗原特異的な活性化T細胞にFoxp3を誘導し、免疫寛容を導入する戦略は古くから研究されてきた。
しかしながら、活性化T細胞へのFoxp3誘導はTGF-βなど既存の手法では効率的ではない。

今回紹介する文献中で、著者らは化合物スクリーニングによるTreg誘導剤の発見、およびCDK8/19の抑制によるFoxp3誘導促進という新規メカニズムの解明を報告した。
この新規Foxp3誘導性CDK8/19阻害剤・AS2863619をin vitroにおいてDynabeads™ T-Activator CD3/CD28と共に作用させることでTGF-β非依存的にFoxp3を誘導することができる。
この現象は通常Foxp3を誘導できないIL-6やIL-4の存在下でも再現可能であり、TGF-βとは全く異なる新たなFoxp3誘導システムの構築に成功した。
このAS2863619はin vivoにおいてもFoxp3誘導を促進する事、炎症反応を抑制することが確認できており、自己免疫疾患や炎症性疾患に対する新たな治療戦略となる事が期待される。

文献中でのDynabeadsの活用例

新規CDK8/19阻害剤AS2863619はFoxp3陰性T細胞にFoxp3を誘導することを目的として探索された化合物である。
この物質はin vitroin vivoいずれにおいても抗原刺激依存的にFoxp3陽性T細胞を誘導することができる。T細胞はその活性化のためにT細胞受容体(TCR)を介した刺激を受領することが必要であり、in vitroにおいては多くの場合抗CD3抗体によって疑似的にその現象を再現する。
Dynabeads™ T-Activator CD3/CD28はビーズに抗CD3抗体と共刺激シグナルを伝達する抗CD28抗体を付加することで抗原刺激条件を作り出すものであり、本論文中でもin vitroの刺激において使用している。
ここではin vitroにおいてDynabeads T-Activator CD3/CD28を用いたT細胞刺激の手法と、AS2863619のFoxp3誘導作用について紹介する。

研究結果

マウスT細胞を用いた実験では、AS2863619はTCRの刺激に依存してFoxp3を誘導することができる。本論文中ではDynabeads Mouse T-Activator CD3/CD28を用いて刺激することで、TGF-β非存在下においてもFoxp3陽性細胞が増加することを示している(図1)。

また、ヒトT細胞を用いた場合でも同様にDynabeads Human T-Activator CD3/CD28を用いて刺激することで、AS2863619はFOXP3の発現を上昇させる(図2)。これらの作用はTCR刺激存在下でAS2863619がTreg誘導を促進することを示している。

図1 マウスCD4陽性ナイーブT細胞(上段)またはエフェクターT細胞(下段)からのFoxp3誘導

無題.png

図2 ヒトCD4陽性ナイーブT細胞(上段)またはエフェクターT細胞(下段)からのFOXP3誘導

無題1.png

研究方法及び材料

  1. FACSによりT細胞を調製する。マウスの場合、Foxp3-GFPレポーターマウスからCD4+GFP-CD62Lhigh細胞(ナイーブT細胞)もしくはCD4+GFP-CD44high細胞(エフェクターT細胞)を精製する。ヒトの場合、末梢血からCD4+CD25-CD45RA+細胞(ナイーブT細胞)もしくはCD4+CD25-CD45RO+細胞(エフェクターT細胞)を精製する。
  2. 調製したT細胞(2×105/well)を完全培地(RPMI1640 supplemented with 10% FCS (v/v), 60 µg/mL penicillin G, 100 µg/mL streptomycin, 0.1 mM 2-mercaptoethanol)に懸濁し、human IL-2 (50 U/mL)、Dynabeads™ T-Activator CD3/CD28 (5 μL) 存在下で3日間刺激する。培養には平底96wellプレートを使用する。
    この時必要に応じてAS2863619(1 μM : 図ではASと略)、human TGF-β1 (2.5 ng/ml)、抗TGF-β抗体 (10 μg/ml)を加える。
  3. 細胞を回収し、Foxp3陽性細胞の割合をフローサイトメーターで検出する。

 

使用者のコメント

本論文中で使用したDynabeads T-Activator CD3/CD28は代表的なT細胞刺激試薬であり、かつTreg誘導において優れた作用を示す。
特にAS2863619によるFoxP3誘導作用はプレート固相化CD3抗体刺激よりもDynabeadsを用いた刺激の方が効率的であることを確認しており、それぞれ異なるシグナル系の活性化が起こっている事も予想される。

文献

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