研究者の声
2020/02/03
タンパク質相互作用のプロテオーム解析にDynabeadsを使用 研究者の声【17】
Dynabeads Protein G製品をタンパク質相互作用のプロテオミック解析にご利用いただいております早稲田大学の寺田泰比古先生に製品利用のご感想を頂戴しました。
【研究者紹介】
【研究内容紹介】
本記事では以下の論文についてご紹介させていただきます。
論文タイトル
Identification of Cep169-interacting proteins and the in vivo modification sites of Cep169 via proteomic analysis
論文要旨
Cep169は、CDK5RAP2と相互作用する微小管プラス端結合および中心体タンパク質です。
Cep169は微小管のダイナミクスと安定性を調節することが知られています。
しかしながら、他の細胞機能に関してはほとんど分かっておりません。
本研究では、HeLa細胞抽出物から新規Cep169相互作用タンパク質を同定しました。
LC-MS / MSを介したプロテオーム解析により、中心体タンパク質、繊毛タンパク質、微小管結合タンパク質およびいくつかのE3ユビキチンリガーゼを含む約400の新規Cep169-相互作用タンパク質を同定しました。
さらに、Cep169におけるin vivoの翻訳後修飾部位、すなわち27のリン酸化部位、5つのメチル化部位、および4つのユビキチン化部位を特定しました。これらのうち、コンセンサスCdkリン酸化部位に対応する14個のリン酸化残基は、G1 / S期中の有糸分裂およびCdk調節時における中心体からのCep169のCdk1媒介解離に必要である可能性があります。
さらに、siRNA誘導Cep169枯渇はRPE1細胞の増殖を阻害することがわかりました。
我々の発見は、Cep169が複数のタンパク質と相互作用することにより細胞分裂や繊毛形成に影響を与え、細胞増殖を調節することを示唆しています。
【論文中でのDynabeads活用事例】
細胞抽出物からCep169と相互作用するタンパク質を同定するため
Dynabeads Protein Gを使用し免疫沈降(Immunoprecipitation: IP)を行っております。
免疫沈降のプロトコル
Dynabeads-抗体間のクロスリンク
- DynabeadsをPBSで2回washする
- FLAG抗体をPBSで1 mlに希釈、Dynabeadsに加え、よく混合する
- Dynabeads抗体混合液を4℃, 60 min, Rotate[抗体-Beads結合]
- 混和後上清を破棄し、BBBで2回程washする
- BBB 500 ulと2×DMP 500 ulを加えてよく混合する
- 4℃, 30 min, Rotate[クロスリンク]
- Tris-solutionで3回程washする
- Tris-solutionを1 ml加えて4℃, 90~ min, Rotate[クエンチ]
- PBSで3回程washする
- PBSを1 ml加える
- 使用する時までNaN3を加えて4℃保管
免疫沈降(Immunoprecipitation)
- Doxycycline誘導のFLAG-Cep169発現HeLa細胞株を使用
- 細胞を回収し、遠心した後、上清を回収する
- クロスリンク済みのDynabeads-FLAG抗体を添加
- Rotate, 4℃, 3h
- Wash Bufferでwashする
- Elution Bufferでeluteする
- 銀染色で確認
【各種バッファー】
- PBS : PBS, 0.1%-Tween20
- Antibody : 5ug/Cell extract 1mL
- Dynabeads : 5ul/antibody solution 1uL
- BBB : Borate-Boric acid Buffer, 150mM NaCl, 0.1%-Tween20
- 2×DMP : 10.8mg/mL dimethyl pimelimidate in BBB
- Tris-solution : 0.1M Tris-HCl(pH8.0), 200mM NaCl, 0.02%-Tween20
*その他バッファー等の詳細は下記参考文献をご参考下さい。
銀染色の結果
下図に示すよう、免疫沈降によりCep169と相互作用するタンパク質を精製する事が出来ました。
紹介している論文中ではLC-MS/MSを用いてCep169と相互作用するタンパク質の同定も行っておりますので論文も是非ご参照ください。
【Dynabeadsを使用した感想】
サンプルロスを軽減させることが出来たほか、扱いの簡便さから操作時間の短縮に繋がりました。
また、非特異的なタンパク質吸着が少ない点も魅力を感じました。
【今後の展望】
今回は質量分析を目的として使用しましたが、今後は低いバックグラウンドを活かしてリコンビナントタンパクの精製など用途を広げていきたいと考えています。
【参考文献】
【ご利用いただいた製品】
製品コード | 製品名 | 梱包単位 |
---|---|---|
DB10003 | Dynabeads Protein G | 1 mL |
DB10004 | Dynabeads Protein G | 5 mL |
DB10009 | Dynabeads Protein G | 50 mL |
DB10007 | Dynabeads Protein G Immunoprecipitation Kit | 2 mL |