研究者の声
2017/07/31
全ゲノム情報を基盤とした情報解析技術の開発と応用に、東京大学でNXType NGSを使用
- 移植・HLA・MHC
東京大学大学院医学系研究科 人類遺伝学教室(徳永 勝士 教授)を訪ねて、人見 祐基 先生とKhor Seik Soon (Charles) 先生にNGS法によるHLA-DNAタイピングのお話を伺いました。
ご案内:
本稿でご紹介しているNXType NGSは、AllType NGSに製品がバージョンアップされました。
AllType NGSでは、HLA Class IとClass IIの11ローカスを1チューブでマルチプレックスPCRをする仕様に変わりました。
解析対象配列もNXType NGSに比べて長くなっています。
研究者紹介
人見 祐基 先生
東京大学大学院医学系研究科 人類遺伝学教室 助教
人見先生は小さい頃からサイエンスに興味を持ち、特に高校生の時に遺伝学に興味を持ち、現在の研究者の道に進みました。
東京大学大学院にて博士課程を修了後、理化学研究所、Duke Universityでポスドクを経て、現在に至ります。
現在の研究は、GWAS(Genome Wide Association Study:ゲノムワイド関連解析)から同定された疾患感受性遺伝子を対象として、様々なアプローチを駆使して発症機序の解明を目指した研究を行っています。
Khor Seik Soon (Charles) 先生
東京大学大学院医学系研究科 人類遺伝学教室 特任助教
マレーシアから来たCharles 先生は、日本で8年間にわたり人類遺伝学の知識をベースとしてGWASとNGSを利用しつつ、Imputation toolの開発をしています。
また、HLAに関する研究も行っています。
※ 所属や役職等は掲載当時のものです
インタビュー
NXType NGSの使用
特に免疫に関わる疾患の感受性遺伝子検索をGWASで行うと、HLA遺伝子がやはり多くヒットしてきます。
そこから詳細な解析を行ったとき、数千検体のDNAサンプルを対象としたHLAアレルの遺伝子型タイピングを実施するには、多くの時間と費用が必要です。
人類遺伝学教室ではこの問題点を解消するために、GWASからのSNP(Single Nucleotide Polymorphism:一塩基多型)データとNGSでのHLAタイピングデータを利用することでImputationによりHLAが推定可能になり、研究が進むと考えています。
現在、幾つかのHLAアレルの予測ソフトが開発されていますが、それらのソフトは日本人を含むアジア人集団のHLAアレルを含めて開発されておらず、まだ十分なアルゴリズムが確立されていません。現在NGSにより8桁のHLAタイピング情報を収集し、精度の向上を進めているところです。
全ゲノム情報を基盤とした情報解析技術の開発と応用のため、NXType NGSを導入しました。
現在はSJS(Steven Johnson Syndrome:スティーヴンス・ジョンソン症候群)の疾患感受性とHLAとの関連をGWASで見出し、そのHLA解析も進めています。
SJSは発症のもとになった薬剤の違いによって、関連を示すHLAアレル(4桁レベル)の違いもわかってきています。
さらに、HLAを8桁で解析することでも新たな知見が得られることが予想されます。
(右)東京大学大学院医学系研究科 人類遺伝学教室 人見先生
(中)同 Charles先生
(左)株式会社ベリタス バイオサイエンス本部技術グループ 横沢
株式会社ベリタスのイメージ
人見先生
「ベリタスとは研究室として長年付き合いがあります。人類遺伝学を研究している私にとっては、研究ニーズを的確に把握し、良い技術情報の提供してくれる会社という印象です。また、信頼感およびサイエンス、特にHLA・免疫・遺伝のイメージを強く感じる会社です。」
Charles先生
「私が実際にベリタスと関係性を持ったのは3 - 4年前のことです。日本で代表的なHLAタイピングの試薬を販売する会社というイメージが強いです。常に最新情報を提供してくれ、日本において最新のNGS-HLAタイピング分野に参入したのもベリタスでした。これから期待しております。」
関連論文
人類遺伝学教室においてSJSとHLA研究に関連した論文
- Ueta M, Sotozono C, Tokunaga K, Yabe T, Kinoshita S. Strong association between HLA-A*0206 and Stevens-Johnson syndrome in the Japanese. Am J Ophthalmol. 2007 Feb;143(2):367-8. Epub 2006 Oct 25. PubMed PMID: 17258541.
- Isogai H, Miyadera H, Ueta M, Sotozono C, Kinoshita S, Tokunaga K, Hirayama N. In Silico Risk Assessment of HLA-A*02:06-Associated Stevens-Johnson Syndrome and Toxic Epidermal Necrolysis Caused by Cold Medicine Ingredients. J Toxicol. 2013; 2013: 514068. doi: 10.1155/2013/514068. Epub 2013 Oct 12. PubMed PMID: 24285954; PubMed Central PMCID: PMC3810500.
- Ueta M, Kaniwa N, Sotozono C, Tokunaga K, Saito Y, Sawai H, Miyadera H, Sugiyama E, Maekawa K, Nakamura R, Nagato M, Aihara M, Matsunaga K, Takahashi Y, Furuya H, Muramatsu M, Ikezawa Z, Kinoshita S. Independent strong association of HLA-A*02:06 and HLA-B*44:03 with cold medicine-related Stevens-Johnson syndrome with severe mucosal involvement. Sci Rep. 2014 Apr 30; 4:4862. doi: 10.1038/srep04862. PubMed PMID: 24781922; PubMed Central PMCID: PMC5381277.
- Ueta M, Kannabiran C, Wakamatsu TH, Kim MK, Yoon KC, Seo KY, Joo CK, Sangwan V, Rathi V, Basu S, Shamaila A, Lee HS, Yoon S, Sotozono C, Gomes JÁ, Tokunaga K, Kinoshita S. Trans-ethnic study confirmed independent associations of HLA-A*02:06 and HLA-B*44:03 with cold medicine-related Stevens-Johnson syndrome with severe ocular surface complications. Sci Rep. 2014 Aug 7; 4:5981. doi: 10.1038/srep05981. PubMed PMID: 25099678; PubMed Central PMCID: PMC4124463.
- Ueta M, Sawai H, Sotozono C, Hitomi Y, Kaniwa N, Kim MK, Seo KY, Yoon KC, Joo CK, Kannabiran C, Wakamatsu TH, Sangwan V, Rathi V, Basu S, Ozeki T, Mushiroda T, Sugiyama E, Maekawa K, Nakamura R, Aihara M, Matsunaga K, Sekine A, Gomes JÁ, Hamuro J, Saito Y, Kubo M, Kinoshita S, Tokunaga K. IKZF1, a new susceptibility gene for cold medicine-related Stevens-Johnson syndrome/toxic epidermal necrolysis with severe mucosal involvement. J Allergy Clin Immunol. 2015 Jun;135(6):1538-45.e17. doi: 10.1016/j.jaci.2014.12.1916. Epub 2015 Feb 8. PubMed PMID: 25672763.