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研究者の声

2022/01/13

自己免疫疾患の研究でDynabeadsを使った免疫沈降が活躍 研究者の声【34】

Dynabeadsは非特異的な結合が少ない磁気ビーズで免疫沈降実験のゴールドスタンダードとして広く知られています。そのようなDynabeadsの特長はタンパク質を多く含む血清サンプルを扱う研究においても非常に有用です。
今回は関節リウマチやシェーグレン症候群などの自己免疫疾患における自己抗体の研究事例をご紹介します。

研究者紹介

researcher34-Takesitasama.png竹下 勝先生

慶應義塾大学 医学部
リウマチ膠原病内科 助教

慶應義塾大学医学部リウマチ・膠原病内科HP

※ 所属や役職等は掲載当時のものです



論文

Antigen-driven selection of antibodies against SSA, SSB, and the centromere “complex”, including a novel antigen, MIS12 complex. Takeshita M, Suzuki K, Kaneda Y, Yamane H, Ikeura K, Sato H, Kato S, Tsunoda T, Arase H, Takeuchi T. Ann Rheum Dis. 2020;79(1):150-158.

研究内容

当研究室では自己免疫疾患患者様由来の臨床検体の詳細な解析を行っています。
私はその中でも病変部位に浸潤しているリンパ球の抗原特異性に着目し、自己の成分に反応するリンパ球がどの様な抗原に反応するのか、そしてなぜそのようなリンパ球が出来てくるのか等について研究を行っております。

実験内容・結果

関節リウマチを始めとした自己免疫疾患の患者様の血液中には、自己成分に反応する抗体である自己抗体が出てくることが知られていますが、自己抗体がどこでどのように作られるのかは明確ではありませんでした。
私達は、シェーグレン症候群の病変部位である唾液腺に浸潤したB細胞をシングルセルで分取し、各B細胞の抗体の遺伝子配列を取得し、それをリコンビナントモノクローナル抗体として250種類以上作製しました。作製した抗体の反応性を調べてみると、多くのシェーグレン症候群患者様の血清中に認められる抗SSA抗体・抗SSB抗体と、一部のシェーグレン症候群患者様の血清中に認められる抗セントロメア抗体が含まれており、その頻度は浸潤したB細胞の約1/3と高率でした。
得られた抗体の解析から、それらの抗体が抗原特異的に作られている事が分かり、シェーグレン症候群では「自己抗体が病変部位で抗原特異的に」作られている事が分かりました。さらに、既知の抗原に反応しなかった抗体で免疫沈降を行った所、新規の抗セントロメア抗体の対応抗原であるMIS12複合体を同定できました(図1)。
抗セントロメア抗体は全身性強皮症や原発性胆汁性胆管炎でも出現する事が知られており、シェーグレン症候群とこれらの疾患の患者血清の抗セントロメア抗体のプロファイリングを行った所、共通して多様なセントロメア抗原と反応していました。自己抗体の共通性に加え臨床症状の類似性もある事から、これらの疾患は「抗セントロメア抗体症候群」と呼べるような、一連の疾患の多様な表現型を見ているのではないかと考えられました(図2)。

図1.シェーグレン症候群の唾液腺の抗MIS12複合体抗体産生細胞 (白矢印)
researcher34-1.png

図2.3疾患で認められる抗セントロメア抗体の位置付け
researcher34-2.png

Dynabeads磁気ビーズの活用事例

  • Streptavidin-binding peptide tag付きのリコンビナント抗原タンパク質のオンビーズ精製と、そのビーズを用いたFACSによる抗体の反応性解析(Dynabeads M-280 Streptavidin)
  • モノクローナル抗体を用いた免疫沈降法(Dynabeads Protein G)

Dynabeadsを使用しての感想

抗体の反応性を扱う研究では、リコンビナントタンパク質の純度の良い精製と、血清中の様々なたんぱく質の非特異的な結合の抑制が課題となる事が多いです。
様々なstreptavidin beadsやprotein G beadsを比較しましたが、最も精製の純度が良く非特異的な結合が少ないものがDynabeadsでした。Dynabeads M-280 Streptavidinは大きさが2.8μmとやや大きめなので、FACSの設定を細胞と大きく変えなくても良い所も利点でした。

今後の展望

今回、一部の自己免疫疾患で自己抗体が病変部位で作られている事を示すことが出来ましたが、今後はこれがその他多くの自己免疫疾患で共通した現象なのか、またなぜこのような事が起こるのかを調べていきたいと思います。

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