研究者の声
2024/02/15
尿中セルフリー成分を対象とした造血器腫瘍遺伝子変異の検出 研究者の声【41】
- 遺伝子解析
リキッドバイオプシーは血液や尿に含まれる細胞外成分(セルフリー成分)を対象とするアッセイです。
Cell-Free DNA (cfDNA)やcfRNA、エクソソームなどのセルフリー成分は、疾患細胞由来の遺伝子変異や疾患に関連する物質を含んでいるため、固形がんをはじめとした疾患の診断やモニタリングのバイオマーカーとして活用されています。国内でも血中セルフリー成分を対象としたがんパネル検査が行われています。
さらに尿は血液よりも侵襲性が低いため新たなリキッドバイオプシーの対象として注目されています。海外ではすでに尿リキッドバイオプシーを利用したがん検査サービスが提供されています。国内でも尿リキッドバイオプシーの研究は広がっていますが、主な対象疾患は泌尿器系を中心とした固形がんです。今回、固形がんではなく、造血器腫瘍における尿中cfDNAに着目し、がん由来の遺伝子変異の検出に取り組まれた先生のご研究を紹介します。
今回の研究では一部の尿検体の保存にStreck社のStreck Urine Persevereが使用されています。
※本稿は先生へのインタビューおよび発表論文を元に構成しています。
研究者紹介
細井 裕樹 先生
和歌山県立医科大学 医学部附属病院
血液内科学講座
和歌山県立医科大学 医学部附属病院血液内科学講座HP
※ 所属や役職等は掲載当時のものです
研究内容
研究の背景
固形がんにおいては血漿中のみならず、尿に含まれるセルフリー成分を活用した遺伝子変異検出およびモニタリングへの応用が行われているが、造血器腫瘍における有用性については明らかとなっていなかった。今回は造血器腫瘍の一種である骨髄増殖性腫瘍(MPN)を対象とした。MPNの多くの症例においてJAK2遺伝子変異、とくにV617Fの変異が見られる。現在は血中DNAを用いた遺伝子変異検査による診断が行われているが、本研究では尿中cfDNAからの検出を試みた。
研究手法
JAK2遺伝子変異が見られる患者および遺伝子変異が見られない患者、健常者の血液および尿を採取した。血液からはゲノムDNAを抽出し、JAK2遺伝子変異の割合をqPCRもしくはdroplet digital PCR (ddPCR)で測定した。尿からはcfDNAを抽出し、JAK2遺伝子変異の割合をddPCRにて測定した。
尿を採取後3時間以内に処理できない場合はStreck Urine Preserveを使用し検体を保存した後処理を行った。
実験結果・今後の展望
推算糸球体濾過量(eGFR)の値に関わらず、JAK2遺伝子変異が見られる患者すべてで、尿中cfDNAからJAK2遺伝子変異が検出された。また、遺伝子変異が見られない患者や健常者の尿中cfDNAからはJAK2遺伝子変異は検出されなかった。さらに、血中DNAおよび尿中cfDNAにおけるJAK2遺伝子変異陽性率は正の相関を示した。
尿中cfDNAはMPNにおける遺伝子変異検出やモニタリングに有用であると思われる。
今後も造血器腫瘍における検討を行い、血液だけでなく尿セルフリー成分を活用した診断やモニタリングに応用できればと考えている。
Streck Urine Preserveを使用した感想
患者からの尿検体採取のタイミングはそれぞれ変わるため、Urine Preserveを使って保存をすることにより、検体をまとめて解析することが可能になった。すぐに上清の遠心処理をせずに保管できるという安心感もある。尿に加えるだけの簡単な手法であることや、低コストであることもメリットである。
関連製品
Streck Urine Preserveは尿中cfDNA/cfRNA/細胞などを安定化する試薬です。様々な尿リキッドバイオプシー研究・検査に活用できます。
・1ボトル(5 mL)で25-100 mLの尿を保存可能
・添加したことを目視で判別可能(青色試薬)
・セルフリー成分を6-37℃で1週間安定保存
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