研究者の声
2024/09/18
コストパフォーマンスに優れた次世代磁気ビーズをChIP-seqで使用 研究者の声【43】
東京大学理学系研究科RNA生物学研究室では生殖組織特異的RNAサイレンシング機構、ゲノム構築過程の分子メカニズム解明を目的に幅広い研究を行っています。その中でも、同研究室に所属する准教授の山中 総一郎先生は「生殖細胞でのエピジェネティクス」というテーマのもと研究をされています。今回は新製品の免疫沈降用磁気ビーズ「DynaGreen」をChIP-seqの実験でお試しいただきましたので、プロトコルや使用感などについてのインタビューをご紹介いたします。
研究者紹介
山中 総一郎 先生
東京大学大学院 理学系研究科
RNA生物学研究室(塩見研究室)准教授
※ 所属や役職等は掲載当時のものです
東京大学大学院 山中先生(左)と株式会社ベリタス 八須(右)
研究内容
マウスの生殖細胞を用いてクロマチンに関する研究をしています。一般的に哺乳類の発生ではゲノム配列が変化することは無く、そのかわりエピゲノム情報がゲノムに付与されることで、ゲノム上の転写状態が制御されています。生殖細胞は、このようなエピゲノム情報が大規模に変化する、とても特殊な細胞で、このような性質が精子や卵子が持つ特別な機能の獲得に重要な働きを持つことが知られています。
実験内容・結果
以前、Veritasの研究者の声で紹介させていただいたChIP実験「ChIP-seq実験にDynabeadsを使用 研究者の声【16】」を、3種類のDynaGreenビーズを用いて行いました。マウス胚性幹細胞(mouse embryonic stem cell, mESC)を1サンプルあたり4万細胞使用しています。ヒストン修飾の一種であるH3K9me3に対するChIP実験を行うと、ポジティブコントロールであるセントロメア領域のDNAがネガコンのDNA領域に比べて優位に濃縮されてきました(図1)。この実験からDynaGreenは従来品と同様の結果が得られ、さらに3種類のDynaGreen間で性能に大きな違いは見られませんでした。ネガコンに対するポジコンのシグナル強度(シグナルノイズ比)という点からもDynaGreenの性能に大きな違いはありませんでした(図2)。
DynaGreenの活用事例
少数細胞のmESCを用いたChIP実験
DynaGreenを使用しての感想
従来のマグネティックビーズと性能に大きな差は見られず、これまでの実験の質を落とすこと無く使用できる製品だと感じました。ビーズの粒径が小さいせいか、マグネットに引き寄せられる時間が数秒長くなるように感じましたが、気になる程度ではありません。
今後の展望
SDGsに配慮するという観点からも面白い製品だと感じました。研究の現場では質と価格とのバランスを考えながら使用する製品を決めるので、DynaGreenをルーチンで使った際の費用なども考慮に入れたうえで導入するか検討したいと思います。