STEMCELL Technologies STEMdiff STEMdiff Intestinal Organoid Kit
- 研究用
STEMdiff™ Intestinal Organoid Kit(ST-05140)は、3段階の簡易なプロトコルによって、ヒト多能性幹細胞(hPSC)由来の腸オルガノイドを強固かつ効率的に作製する無血清培地です。hPSCを胚体内胚葉(definitive endoderm)から中/後腸(mid-/hindgut)スフェロイドに誘導した後、腸オルガノイドを樹立し、継代培養か凍結保存により長期間維持できます。腸オルガノイドは、発達中の腸上皮と付随する間充織を模倣する細胞組成と組織化を示し、発達中の腸と直接関連する便利なモデルとなります。
本品は、Spence et al. (Nature 2011)が報告した組成に基づいており、複数のhPSC株にわたってオルガノイド形成・増殖の効率と再現性を高めるよう最適化されています。また、mTeSR™1で維持されたhPSCからの分化に最適化されています。
STEMdiff™ Intestinal Organoid Growth Medium(ST-05145)には、すでに樹立したヒト腸オルガノイドを長期に継代培養するために必要な構成品のみが含まれています。
ヒト腸オルガノイドは、腸の発生と細胞生物学、炎症、再生、微生物相互作用、疾患モデル、創薬、化合物スクリーニングなどの研究においてモデル系として使用できます。
製品の特長
STEMdiff™ Intestinal Organoid Kitで、hPSCからヒト腸オルガノイドを無血清で樹立、維持
- 発達中の小腸上皮と付随する間葉の適切なモデル系
- hPSCから腸オルガノイドへの効率良い分化をサポート
- 継代または凍結保存で長期に維持でき、柔軟な実験計画を実現
- 実験の変動を抑えるように最適化された無血清培地
ヒト腸オルガノイド樹立のワークフロー
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(A) hPSCから3段階の分化誘導プロセスを経てヒト腸オルガノイドを樹立します。プロトコルの3日目までに、培養物は胚体内胚葉に典型的な特徴を示し、中/後腸の分化を開始します。中/後腸の分化のあいだ(5〜9日目)、細胞は中/後腸スフェロイドを形成し、細胞単層から培地に放出されます。これらのスフェロイドを回収し細胞外マトリックスに埋め込みます。
(B) 包埋された中/後腸スフェロイドは、腸オルガノイドに成熟します(括弧内は、各継代の包埋後の日数)。一度確立された腸オルガノイドは、7〜10日毎の継代により、培養で維持および拡大することができます。複数回継代した後、オルガノイドは一般的にマトリックスドーム内で沈下しにくくなり、間葉系細胞の割合が低下します。
データ紹介
ヒト腸オルガノイドの構造
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STEMdiff Intestinal Organoid KitでhPSCから作製した3継代目の小腸オルガノイド。極性化した上皮の単層で囲まれた中空の内腔と、付随する間葉系細胞集団から構成されます。
複数のhPSC株にわたり、安定的に分化と増殖をサポート
STEMdiff Intestinal Organoid Kitは、ヒトES細胞(H9、H7)とiPS細胞(WLS-1C、STiPS-M001)の両方から腸オルガノイドを高効率で作製できます。
(A)さまざまな細胞株由来のオルガノイドは、分化3日目にFOXA2とSOX17の共発現が示すとおり胚体内胚葉に効率的に誘導されます。
(B)ESおよびiPS細胞由来の培養物はどちらも、中/後腸誘導時に効率的にスフェロイドを形成します。各回の分化でウェルごとに得られたスフェロイドの総数を示しています。
(C)ESおよびiPS細胞由来のオルガノイドは、複数の継代にわたって拡大および維持できます。継代あたりの総細胞収量を示しています。オルガノイドは7〜10日ごとに、分割比1:2~1:4で継代しました。データは3回の生物学的複製の平均値で表しています。エラーバーは、平均の標準偏差を表します。
中/後腸スフェロイドの特徴
(A)STEMdiff Intestinal Organoid Kitで分化した培養物は、胚体内胚葉および中腸/後腸への誘導で期待されるマーカーを示します。遺伝子発現パターンは、0日目の多能性マーカーから、3日目までに胚体内胚葉マーカー、9日目までに中腸/後腸上皮に移行します。9日目の中腸/後腸培養は、付随する間充織のマーカーも発現します。マーカーの発現レベルをRT-qPCRで測定し、未分化H9細胞株の発現レベルに対し正規化しました。
(B)中腸/後腸スフェロイド(9日目)は、腸上皮マーカー(CDX2、E-カドヘリン、EPCAM)を発現します。
(C)中腸/後腸スフェロイド(9日目)には、付随する間葉(ビメンチン)の成分も組み込まれています。
小腸上皮に特徴的なマーカーを発現
(A)分化したhPSC由来の腸オルガノイドは、腸上皮および付随する間葉のマーカーを発現します。マーカーの発現レベルをRT-qPCRで測定し、未分化H9細胞株の発現レベルに対し正規化しました。
(B、C)腸オルガノイドは、CDX2を含む腸前駆細胞マーカーおよび腸陰窩マーカーSOX9を発現します。EPCAMの外側(基底外側)表面への局在(B)が極性化した上皮を示し、MUC2(B:杯細胞)やCHGA(C:腸内分泌細胞)を含む成熟細胞型に典型的なマーカーが発現しています。
(D、E)デスミン(D)とビメンチン(E)は間葉系細胞の取り込みを示します。一方、KRT20(D)とKi67(E)はそれぞれ分化した腸細胞と推定腸幹細胞のマーカーです。P28(7日目)の腸オルガノイドを、ホールマウント免疫蛍光染色したデジタル断面図を示しています。
mTeSR™ Plusで維持培養したhPSCから樹立した腸オルガノイド
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mTeSR™ Plusで培養したヒトES細胞(H9株)を、STEMdiff™ Intestinal Organoid Kitで腸オルガノイドに分化させました。腸上皮マーカーのEpCAM(緑)とCDX2(赤)、間葉マーカーのビメンチン(白)、およびDAPI(青)で対比染色した核を示しています。
関連製品
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mTeSR1 - cGMP
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mTeSR Plus-cGMP
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