ラーニングコーナー
2020/06/01
Dynabeadsを活用したPhage Displayのアプリケーション【磁性粒子】
ファージディスプレイでは、バクテリオファージの表面に特定のリガンドを提示させ、バイオパニングによる選択がおこなわれています。磁性粒子であるDynabeadsは、バイオパニングのための固相化担体として効果的に利用できます。治療や診断におけるターゲットマーカー、あるいは創薬におけるリード化合物の同定に広く使われています。
Dynabeadsの特徴
- ビオチン化したリガンドを利用可能
- ターゲットを磁性粒子表面に固定し、下流の実験に利用可能
- 広い表面積で高い回収量を実現
- 自動化することでハイスループットのパニングを実現可能
Dynabeadsを用いたファージディスプレイライブラリー構築の自動化
方法
Dynabeadsを用いたpanning
- マイクロチューブにビオチン化抗原とストレプトアビジンでコートされた Dynabeads を加え、一晩穏やかに攪拌し、抗原とビーズを結合させます。PBSで3回洗浄し、200 µL KingFisher へ移します。
- バックグラウンドの結合を抑えるために、100 µLのファージライブラリーと抗原を結合させていない 20 µLの Dynabeadsを30分間穏やかに攪拌します。
- ライブラリーと 20 µLの抗原を結合させたDynabeadsを30分間穏やかに攪拌しながらインキュベートします。
- 200 µLのPBSで8回ビーズを洗浄します。(プレートを交換)
- ファージパーティクルを100 µLの0.1 Mグリシン溶液(pH 2.5)で溶出させます。
- 溶出させたファージパーティクルを5 µLの1 M Tris-HCI(pH 9)で中和させ、大腸菌への形質転換に用います。
結果
ファージライブラリーを発現している抗体断片のpanningをDynabeadsとKingFisherを用いておこないました。Panning 操作では、リガンドと磁気ビーズの結合、磁気ビーズの洗浄、および溶出のステップが含まれます。実験操作の流れを下図に示しました。洗浄操作のステップでは、KingFisherが大変有用でした。KingFisherを用いると、バックグラウンドのシグナルがマニュアル操作と比較して1/500に大幅に低減されました。
また、KingFisherにより操作時間が大幅に削減されます。KingFisherとマニュアル操作で得られる結果には大きな違いは見られませんでした。このように、KingFisherでファージディスプレイを自動化することが可能であり、その時にはDynabeadsが必須となります。
結論
DynabeadsはPanningに非常に適しており、KingFisherと組み合わせれば、より操作時間を大幅に短縮します。Dynabeadsは、その他多くのファージディスプレイライブラリーの構築に応用できます。
参考文献
- Barbas, et al (1991). Assembly of Combinatorial Antibody Libraries on Phage Surfaces: The Gene III Site. Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 88 (18):7978-82
- Hoogen, et al (1991). Multi-subunit proteins on the surface of filamentous phage: methodologies for displaying antibody (Fab) heavy and light chains. Nucl. Acids Res., 19 (15), 4133-7
Dynabeadsを使ったファージディスプレイの事例紹介
2010年に発刊されたAntibody Engineeringのチャプター11で紹介されているファージディスプレイのプロトコル
ビオチン化した抗原リガンドを用いて結合するファージをスクリーニングしストレプトアビジン磁性粒子で単離する手法です。
プロトコル論文で手法が詳しく書かれています。
Fab抗体ライブラリーのパニングを効率的におこなうために、Fabをビオチン化しDynabeads MyOne Streptavidin C1で濃縮する方法
A Sortase A Programmable Phage Display Format for Improved Panning of Fab Antibody Libraries.
Journal of Molecular Biology, 11 Sep 2018, 430(21):4387-4400. Wilson HD, Li X, Peng H, Rader C.
本手法により抗体ライブラリーのセレクション効率が向上しています。
ファージディスプレイでよく使われるDynabeads
磁性粒子の表面にストレプトアビジンを固相化したDynabeads Streptavidinのシリーズがよく用いられています。
これからファージディスプレイを始めたい方には条件検討に使える以下のトライアルキットがおすすめです。