ラーニングコーナー
2020/10/27
凍結プライマリー細胞の融解法
- 細胞・生体試料
ヒトプライマリー細胞は、末梢血・臍帯血・骨髄などを含む組織から直接に分離された細胞です。これらのプライマリー細胞については、生物学的プロセス、疾患の進行、創薬などの研究、ならびにin vitroでの細胞アッセイ、異種移植片またはヒト化マウスモデル作製などの応用において、その重要性への認識が高まっております。
フレッシュなプライマリー細胞をすぐに使用しない場合には、長期保存のために液体窒素中で凍結保存(冷凍)される事がしばしばあります。新鮮なサンプルを得ることが難しい研究者の方々の場合、単核球(Mononuclear cell: MNC)や、純化した免疫系細胞、造血幹細胞などの凍結された調整済みのプライマリー細胞をご購入されることもございます。凍結細胞を融解する際には正しい取り扱いをしていただくことによって、高い細胞の生存率、回収率、またその細胞を用いた実験において求められる細胞の機能性を保つ事ができます。
このプロトコールでは、凍結プライマリー細胞の融解方法について記述しています。お使いの細胞の種類によって融解プロトコールは異なる可能性がありますので、お受け取りになった細胞に同梱された推奨プロトコールを毎度ご確認するようにしてください。
併せてこちらも(https://www.stemcell.com/technical-resources/how-to-thaw-frozen-primary-cells.html#materials)ご確認ください。
ご準備いただくもの
- ヒトプライマリー細胞(凍結)
- 推奨培地と添加物:
- Iscove's Modified Dulbecco's Medium / 添加物:10% ウシ胎児血清(FBS)
- DMEM 4500 mg/L D-Glucose (ST-36250) / 添加物:10% FBS
- RPMI 1640 Medium (ST-36750) / 添加物:10% FBS
- リン酸緩衝食塩水(PBS) / 添加物: 2% FBS (例: Dulbecco's Phosphate Buffered Saline (ダルベッコPBS, D-PBS) / 添加物:2% Fetal Bovine Serum, ST-07905)
- 2 mL 血清用ピペット(例:Falcon® Serological Pipettes, 2 mL, ST-38002)
- 25 mL 血清用ピペット(例:Falcon® Serological Pipettes, 25 mL, ST-38005)
- 50 mL コニカルチューブ(例: Falcon® Conical Tubes, 50 mL, ST-38010)
- DNase I Solution (1 mg/mL)
- Hemocytometer (e.g. Neubauer Hemocytometer) and cover slip
- Trypan Blue (ST-07050)
- Pipettor (e.g. Corning® Lambda™ Plus Pipettor, Catalog #38060)
- Pipette tips (e.g. Corning® Filtered Pipette Tips, Catalog #38034)
プロトコール
あわせてこちらの動画もご覧ください。
ヒト凍結プライマリーセルの融解方法
パート1:前準備
- 培地を37℃のウォーターバスで温めます。推奨培地のリストについては「ご準備いただくもの」の項目をご参照ください。融解した細胞を細胞分離に用いる場合には、2% FBS / PBSをご使用いただく事をお勧めします。
- 保存している凍結細胞を使用する際には、室温(15 – 25℃)への暴露を最小限にする事が重要です。すぐに融解をしない場合、出した細胞はドライアイス上か液体窒素コンテナの中に入れて運んでください。
パート2:細胞の融解
ご注意:高い温度でDMSOに長時間さらすことを避けるため、凍結細胞の融解は1回につき1バイアルずつでおこなっていただく事をお勧めします。
- バイアルの外側を70%エタノールまたはイソプロパノールで拭きます。
- バイオセーフティキャビネット内で、1/4回転ほどバイアルのキャップを緩めて内圧を逃がし、再びキャップを閉めます。
- 37℃のウォーターバスの中でバイアルを穏やかに回しながら細胞の融解を素早くおこないます。バイアルの中に小さな氷の塊が見える程度になったらバイアルをウォーターバスから出します。このステップの所要時間は1-2分ほどです。細胞はボルテックスしないでください。
パート3:細胞の洗浄とカウント
ご注意:高い生存率と回収率を得るために、以下のステップの操作を素早くおこなって頂く事が重要です。
- バイアルの外側を70%エタノールまたはイソプロパノールで拭きます。
- バイオセーフティキャビネット内で、2 mLサイズの血清用ピペットを使って細胞懸濁液の容量を計測します。ここで得られた値はステップ8で細胞数を算出するために使用します。細胞はピペットからバイアルに戻してピペッティングによって均一化してください。
- 細胞のカウントのため、細胞懸濁液を20 μL採取します。生存率評価のためにトリパンブルーを使用する場合、細胞数1 x 10⁶個以上の場合には20 μL以上の培地を加え、添加した培地の量を記録しておきます。細胞数が1 x 10⁶個に満たない場合には20 μLのトリパンブルーを添加して直接希釈します。ここで希釈した細胞懸濁液はステップ8まで保管します。血球計算板を用いた細胞カウント方法の詳細については、次の動画をご参照ください。
重要:生細胞のカウントは、凍結細胞の融解直後(洗浄前)におこなう必要があります。それにより製品中の細胞数を確認し、洗浄プロセスでの細胞のロスについて調べる事ができます。洗浄のステップでは、最大で30%程度の細胞ロスが想定されます。 - ピペットを使って、残った細胞懸濁液を50 mLコニカルチューブに移します。
- バイアルを培地1 mLでリンスし、その液を50 mLコニカルチューブ内の細胞懸濁液に滴下して加えます(コニカルチューブを穏やかに旋回させながらおこないます)。
- 15 – 20 mLの培地をコニカルチューブに滴下して加え、洗浄をおこないます(コニカルチューブを穏やかに旋回させながらおこないます)。
- 細胞懸濁液を300 x gで10分間、室温(15 – 25℃)で遠心します。
- トリパンブルーを使用する場合には、ステップ3で調整した希釈サンプルを使って細胞数カウントをおこないます。
- ピペットを使い、ステップ7のサンプルの上清を注意深く除去します。遠心でできた細胞のペレットを壊さない程度に培地を少量残します。チューブを穏やかにタッピングして細胞ペレットを懸濁します。
- 細胞塊ができ始めている場合には、1 mLの細胞懸濁液あたり100 μLのDNase I溶液を添加して室温(15 – 25℃)で15分間インキュベートします。
ご注意:細胞をDNAやRNAの抽出に用いる場合には、DNase I溶液を添加しないでください。 - 15 – 20 mLの培地を穏やかにチューブに添加します。
- 細胞懸濁液を300 x gで10分間、室温(15 – 25℃)で遠心します。
- ピペットで注意深く上清を除去します。細胞ペレットを壊さない程度に培地を少量残します。チューブを穏やかにタッピングして細胞ペレットを懸濁します。
- ここまでの作業の後、細胞は MethoCult™やImmunoCult™を用いた細胞培養、EasySep™による細胞分離などのアプリケーションにご利用いただく事が可能です。