ラーニングコーナー
2019/11/12
免疫沈降(IP)において抗体の溶出を防ぐために(クロスリンク・共有結合)
Protein A/Gを用いた免疫沈降(Immunoprecipitation, IP)でターゲット (標的タンパク質) を溶出する際、抗体も溶出してしまい、標的タンパク質の精製や検出の邪魔になってしまうことがあります。そんな時は、あらかじめ抗体をProtein A/Gとクロスリンク(架橋)して溶出を抑えることができます。
しかし、クロスリンクに関するトラブルも少なくありません。
ここでは、抗体をクロスリンクする方法に加え、クロスリンクで起こりやすい問題とトラブルの解決法についてご紹介します。
クロスリンカーによる架橋
クロスリンカーを介した共有結合によって、抗体とDynabeads Protein A/Gとの間を架橋することができます。以下は代表的なクロスリンカーです。各クロスリンカーの詳細は、製品のメーカーにお問い合わせください。
BS3(Sulfo-DSS)
水溶性クロスリンカーで、中性pHにおいて一級アミンと反応します。
DMP
水溶性クロスリンカーで、一級アミンと反応します。
よくある質問>クロスリンカーをご参照ください。
クロスリンクの注意点
クロスリンクの効率
クロスリンカーをもちいた抗体とビーズの架橋効率は100%にはなりません。抗体によっても効率は変わると考えられます。架橋されなかった抗体が共溶出してコンタミネーションすることを防ぐため、クロスリンク後に酸性pHバッファーで溶出することが可能です。ただし、酸の影響で抗体によってはアフィニティーが変わってしまう恐れがあります。
還元条件での溶出
架橋された抗体でも、SDSサンプルバッファー中のDTTやβ-メルカプトエタノールのような還元剤によって抗体のジスルフィド結合が還元され、溶出の際に軽鎖が遊離することがあります。これを回避するには、還元剤のない条件または酸性pHバッファーで溶出を行ってください。
抗体の親和性低下
クロスリンクにより抗体中のいくつかの結合サイトが架橋され、抗原とのアフィニティーや特異性が損なわれることがあります。その場合はクロスリンクを避けてください。
上記のようなトラブルを解決するのにおすすめの製品が、Dynabeads Antibody Coupling Kitです。
抗体を共有結合を介して固相化:Dynabeads Antibody Coupling Kit
Dynabeads Antibody Coupling Kit
クロスリンカーを使わずに抗体の溶出を最小限に抑えたい免疫沈降にはDynabeads表面に抗体を共有結合を介して直接結合できるDynabeads Antibody Coupling Kitがお勧めです。
非特異結合が極めて少ない磁性ビーズDynabeads M270 Epoxyと、抗体をカップリングするために最適化されたバッファーが付いています。カップリングでは、ビーズ表面のエポキシ基が抗体の一級アミンと共有結合を形成します。確立されたプロトコールに従って、任意の抗体の特異性や親和性に影響を及ぼすことなく簡単にビーズと結合させ、共溶出を防ぐことができます。また、界面活性剤Tweenが含まれないため質量分析(MS)への適用も可能です。
Dynabeads Antibody Coupling Kit 製品情報
Dynabeads M-270 Epoxy 製品情報
ビオチン化抗体とDynabeads Streptavidin製品を組み合わせることで、同様に抗体の溶出を抑えることもできます。
Dynabeads Antibody Coupling Kitとカップリング反応
Dynabeads Antibody Coupling Kitは、Dynabeads M-270 Epoxyの表面に抗体を簡単にカップリングするための製品です。
Dynabeads Epoxyは界面活性剤のTweenを含まないため、質量分析(MS)にも適用可能です。
Dynabeads Antibody Coupling Kitの仕様
キット構成
- Dynabeads M-270 Epoxy
- 5種類のバッファー(抗体結合用)
特長
- Dynabeads Co-Immunoprecipitation KitからCo-IP用バッファーを除いた構成
- クロスリンクによる抗体親和性低下を回避
- さまざまな下流アプリケーションに適用可能
- 質量分析(MS)に適用可能* *Tweenが含まれるSB bufferをTBSまたはPBSに代替
よくある質問
Dynabeads Antibody Coupling Kit
クロスリンクの効率
クロスリンカー
抗体の溶出
Dynabeads Protein A/Gに抗体を架橋したのに、抗体が溶出されてしまう際の改善方法は?
免疫沈降前にビーズに架橋していない抗体を取り除いたのに、まだゲルにバンドがあって、Dynabeadsから抗体が溶出している際の対処方法は?
Dynabeads TosylactivatedへIgGをカップリングしたのですが、洗浄しても抗体のH鎖が観察されます。改善する方法は?
抗体の親和性低下
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初めてIPを行いたい方や、他の方法でIPを行っていてDynabeadsによるIPを試したい方が対象です。