ラーニングコーナー
2021/02/05
STEMdiff™ 神経誘導システムを利用したEB法によるhPSC由来NPCの産生
- 用途別細胞培養
STEMdiff™ Neural Induction MediumとSTEMdiff™ SMADi Neural Induction Kit はdefinedな血清フリーの培地であり、ヒト多能性幹細胞(hPSC)からの神経前駆細胞(NPC)産生を効率的・再現性に優れたものとする目的でご使用頂けます。これらの培地は胚様体(EB)、単層培養いずれかをベースとした神経系誘導プロトコールにも対応しています。
併せてこちらもご確認ください。(https://www.stemcell.com/technical-resources/methods-library/cell-culture/ectodermal-cells/neural-cell-culture/obtain-hpsc-derived-npcs-using-an-eb-based-protocol-with-the-stemdiff-neural-induction-system.html)
EB法
STEMdiff™ Neural Induction MediumとSTEMdiff™ SMADi Neural Induction Kit を使用する事により、hPSCの神経ロゼットへの分化効率を大きく向上させることができます。 その後はNPCを高純度で分離するためSTEMdiff™ Neural Rosette Selection Reagentによって神経ロゼットを選択的に乖離します。最初から最後まで分化誘導工程全体を最適化する事により、良好な結果を得ることができます。ここでは、STEMCELL Technologies社のEB法により神経誘導される際の重要なポイントをいくつかご案内致します:
- フィーダー上で増殖させたhPSCを使用して実験をスタートする場合、神経誘導プロトコールに入る前にまずmTeSR™1 (もしくはmTeSR™ Plus)とCorning® Matrigel® hESC-Qualified Matrix (Corning Catalog # 354277)またはVitronectin™-XFを使用したフィーダーフリーのシステムに切り替えることをお勧め致します。
- 高品質なhPSCを使用して実験をスタートすることが重要です。スタートサンプルから発生したコロニーのうち形態的な分化を示すものは10%未満、細胞は指数増殖期のものである必要があります。
- 本プロトコール を初めて利用する際には、「コントロール細胞株」を使用しておこなうようにしてください。STEMCELL Technologies社技術マニュアル(Generation and Culture of Neural Progenitor Cells using the STEMdiff™ Neural System)のプロトコールで試験され、利用可能と判明している細胞株は次のものになります:H1、H7、H9、WLS-1C、WLS-4D1
- 後におこなうNPC分離の際には大きな細胞塊の方がより回収効率が高いため、プレートは AggreWell™800を使用してください。
- 扁平な細胞(神経堤細胞)を目的の細胞と一緒に選択してしまうことを防ぐため、STEMdiff™ Neural Rosette Selection Reagent中でのオーバーインキュベーションや神経ロゼットクラスターを除去する際のDMEM/F-12での過剰な洗浄は避けるようにしてください。
- 使用前に培地は温めてください。冷蔵庫から出した冷たい培地を直接細胞に添加しないでください。
- 下記のような抗体を用いて免疫細胞化学により神経誘導を確認してください:
o 抗PAX6抗体(初期神経前駆細胞マーカー)
o 抗SOX-1抗体(神経前駆細胞)
o 抗Nestin抗体 (全体の神経マーカー)
o 抗OCT4/OCT3抗体 (未分化hPSCマーカー) - 神経ロゼット形成の確認に適した他のマーカーとして、次のものも使用可能です:
o ZO-1 (神経ロゼット内腔のタイトジャンクションに発現するマーカー)
o SOX-10 (神経ロゼットの外縁に局在する扁平な神経堤細胞で発現)
hPSC由来NPCの形質チェック法についてのさらに詳細な情報は、本技術ヒントをご参照ください。
STEMdiff™ Neural Induction Mediumを使用して産生されたNPCは機能的であり、成熟したニューロンやグリア細胞への分化も可能です。この手法を用いて生成されたNPCの使用可能アプリケーションのより詳細な情報については、パンフレット(hPSC-DELIVED NEURAL CELLS)をご参照ください。
モノレイヤー(単層培養)法:
STEMdiff™ Neural Induction MediumとSTEMdiff™ SMADi Neural Induction Kit を単層培養ベースの神経系誘導プロトコールで用いる際のヒントについては、技術ヒント(Neural Induction for Human Pluripotent Stem Cells (hPSCs) using Monolayer Culture)をご参照ください。
モノレイヤー法は6-9日間でPAX6陽性のNPCが得られる迅速でシンプルな手法ですが、神経系誘導の評価にはマーカー分子の発現を確認することが必須です(細胞形態は必ずしも信頼性ある指標とはならない場合があります)。EB法は文献記録が充実している堅牢なプロトコールであり、神経ロゼット形成を視覚的に評価することも可能です。EB法ではまた、様々な細胞が混在しているNPC培養系から神経ロゼットを選択して「扁平な」神経堤細胞を排除することで、CNSタイプのNPCを効率的に濃縮することが可能です。
さらに詳細な情報についてのお問い合わせや、お困りの場合には株式会社ベリタス(https://www.veritastk.co.jp/contact/)までご連絡ください。