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注目の製品情報

2021/11/29

胃の炎症・吸収などを研究するためのヒト胃オルガノイド作製

  • 用途別細胞培養

ご注意: STEMdiff™ Gastric Organoid の販売は終了しました(2024年11月)。代替品はございません。

STEMCELL Technologies社のSTEMdiff™ Gastric Organoid(商品コード:ST-100-0475、ST-100-0490)は、胃の発達、炎症、再生、微生物との相互作用の研究、あるいは胃の疾患モデリングのために利用できるヒト多能性幹細胞(hPSC)由来の胃オルガノイドを確実に作製します。本品を用いると、さまざまなhPSC株から胃オルガノイドを高効率かつ再現性良く成長および増殖させ、発達中の胃に直接関連する便利なモデル系を手に入れることができます。

STEMdiff™ Gastric Organoidは、McCracken et al.(Nature 2014)1およびBartfeld et al.(Gastroenterology 2015)2の論文に基づくシンプルな4段階のプロトコルを採用しており、hPSCから直接、胃オルガノイドを樹立および分化させるだけでなく、胃オルガノイドの長期的な増殖と凍結保存を可能にします。本品で培養したオルガノイドは、発達中の胃上皮および付随する間葉を再現する細胞組成と組織を示し、胃の研究、ならびに創薬および化合物スクリーニングのための生理学的関連性の高いモデルシステムとなります。

STEMdiff™ Gastric Organoidの特長

STEMdiff™ Gastric Organoidは以下の特長を備えており、hPSCからヒト胃オルガノイドを再現性良く作製できます。

  • 発生中の胃上皮と、付随する間葉に高い関連性をもつモデル系を提供します
  • 堅牢な培地によって、ヒトES/iPS細胞から胃オルガノイドへ効率良く分化できます
  • 継代による長期の維持や凍結保存が可能な、便利でフレキシビリティの高い実験系です
  • 実験のばらつきを抑えるように最適化された無血清培地です
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胃オルガノイドのアプリケーション

ヒト胃上皮生物学の研究は、胃組織培養の難しさと、マウスとヒトの胃にある顕著な生理学的違いとによって長い間妨げられてきました。STEMdiff™ Gastric Organoidで作製されるヒト胃オルガノイドは、このギャップを埋めるモデル系として、以下のようにさまざまな分野での応用が期待されます。

基礎研究での胃オルガノイド利用

  • 胃の発達と機能
  • 胃に特異的な細胞生物学

疾患モデリングでの胃オルガノイド利用

  • ヘリコバクター・ピロリ菌(Helicobacter pylori)の感染
  • 消化性潰瘍、胃潰瘍
  • 炎症、胃炎
  • 胃幽門狭窄症

先端医療/創薬研究での胃オルガノイド利用

  • 精密医療
  • 胃毒性に関する薬剤スクリーニング
  • 薬物動態・アルコール吸収 等

 

胃オルガノイドの作製手順

STEMdiff™ Gastric Organoid Differentiation Kit(ST-100-0475)を使用してヒト胃オルガノイドを作製する手順を紹介します。詳細は英語マニュアル(STEMCELL Technologies社)をご確認ください。

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hPSCの小さな凝集体(50〜200 μm)を、Corning® Matrigel®でコート済みの24ウェルプレート上に、mTeSR™1またはmTeSR™ Plus培地をもちいて低密度(4,000凝集体/ウェル)で播種し、一晩置いて接着させます。毎日培地交換し、ほぼコンフルエント(85〜90%)に達するまで二次元(2D)単層培養を維持します。(A)分化0日目にSTEMdiff™ Definitive Endoderm (DE) Mediumへの培地交換により分化を開始し(ステージ1)、その後毎日培地交換します。(B)3日目にDE Mediumを除去し、STEMdiff™ Gastric Posterior Foregut (PF) Mediumへ交換します(ステージ2)。5日目にレチノイン酸(RA)を培地に添加します。(C)7日目に浮遊する後部前腸(PF)スフェロイドを上清から回収してCorning® Matrigel®に包埋し、10日目までSTEMdiff™ Gastric Organoid Medium + RAで培養します(ステージ3)。10~26日目にスフェロイドはSTEMdiff™ Gastric Organoid Medium中で間葉に囲まれた胃オルガノイドへと成熟します。(D)20~26日目に、胃オルガノイドを継代し、STEMdiff™ Gastric Organoid Medium中で胃マーカー発現が観察されるまで(〜34日目)完全に分化させます。あるいは、(E)STEMdiff™ Gastric Organoid Expansion Mediumで拡大培養して下流のアプリケーションに使用、または凍結保存します。スケールバー = 500 μm。

STEMdiff™ Gastric Organoid Differentiation Kit (商品コード:ST-100-0475)は、mTeSR™1(同:ST-85850)またはmTeSR™ Plus(同:ST-100-0276)で維持されているhPSCからの分化に最適化されています。

STEMdiff™ Gastric Organoid Differentiation Kitの構成品のうち、胃オルガノイドを継代培養で維持するために必要な培地をSTEMdiff™ Gastric Organoid Expansion Medium(同:ST-100-0490)として販売しております。

 

胃オルガノイドのデータ紹介

STEMdiff™ Gastric Organoid Differentiation Kit(商品コード:ST-100-0475)をもちいたヒト胃オルガノイド作製について、複数のhPSC株に対する性能が検証されています。実際のデータをご覧ください。

後部前腸スフェロイドの効率的な形成と出芽

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STEMdiff™ Gastric Organoid Kitによる分化の5~7日目に、2D単層から後部前腸(PF)スフェロイドが形成され剥離します。
(A)7日目のスフェロイド形態の代表的な明視野顕微鏡画像では、内部細胞塊を取り囲む外側の極性化上皮が確認できます。(B)複数のESまたはiPS細胞株由来の培養物が、後腸形成時に効率的にスフェロイドを形成します。特定の分化でプレートごとに得られたスフェロイド総数を示しています。(C)7日目に放出された後部前腸スフェロイドの免疫蛍光分析では、上皮マーカーのSOX2とCADHERINの発現を確認できます。また、(D)間葉ではビメンチンが発現する一方、E-CADHERINは発現しません。スケールバー = 100 μm。

胃オルガノイドの成熟と分化

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Matrigel®に埋め込まれたPFスフェロイドを、分化10日目からSTEMdiff™ Gastric Organoid Mediumで培養すると間葉に囲まれた胃オルガノイドに成熟し(20〜26日目)、完全に分化します(26〜34日目)。分化したオルガノイドは間葉系細胞に囲まれた特徴的な嚢胞形態を示します。34日目にオルガノイド内腔に面する上皮に芽の形成が観察されます(白矢印)。スケールバー = 500 μm。

胃オルガノイドの急速な増殖

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(A)3種のhPSC株(WLS-1C iPS, H9 ES, H1ES細胞株)に由来する胃オルガノイドをSTEMdiff™ Gastric Organoid Expansion Mediumで7日ごとに繰り返し継代しました。各細胞株から得られた胃オルガノイドの継代1, 3, 5, 10回(P1, 3, 5, 10)における終了時の代表的な画像を示します。継代の進行につれて、Matrigel®ドーム内のオルガノイドから継代初期に見られる間葉の特徴が失われ、上皮成分に富む複数のオルガノイドが見られました。スケールバー = 500 μm。(B)複数のヒトES(H1, H9)およびiPS(WLS-1C)細胞株に由来する胃オルガノイドをSTEMdiff™ Gastric Organoid Expansion Mediumで維持すると急速に増殖します(n = 1)。

胃オルガノイドのマーカー遺伝子発現

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4種のhPSC株(WLS-1C iPS, H9 ES, H1ES, F022 iPS細胞株)に由来する胃オルガノイドをSTEMdiff™ Gastric Organoid Differentiation Medium(左)で34日間培養、またはExpansion Medium(右)で0、3、5回継代培養し(P0, P3, P5)、遺伝子発現を解析しました。タイトジャンクションマーカー CLDN18、幹細胞および前駆細胞マーカー LGR5、SOX2、SOX9、そして腺細胞マーカー MUC6がいずれも高発現しています。分化オルガノイドおよびP0オルガノイドにおけるMUC5ACとSSTの高い発現レベルは、胃小窩(pit)と内分泌細胞の存在を示しています。これら2種のマーカーは培養延長とP3、P5への増殖によって発現低下しました。両条件でのGIFの高い発現レベルは、ATP4A発現の欠如から完全に成熟していない壁細胞の存在を示しています。主細胞マーカー PGCの存在は分化オルガノイドおよびP0オルガノイドで確認され、P3、P5での発現上昇は増殖条件での主細胞の濃縮を示唆しています。GASTRINの高い発現レベルは、分化オルガノイド、増殖培地中のWLS-1C株とH9株由来のオルガノイドで観察されました。H1株およびF022株由来のオルガノイドは、増殖条件でGASTRINの発現低下を示し、分化中のG細胞(ガストリン分泌細胞)におけるある程度の細胞株間変動を示唆しています。ポジティブコントロールとして、成人胃mRNAの市販品を使用しました。全サンプルを未分化hPSCと比較し、相対的な遺伝子発現を算出しました(平均±SD、n = 1)。

胃オルガノイドの胃特異的マーカータンパク質発現

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STEMdiff™ Gastric Organoid Expansion Mediumで5回継代した代表的なオルガノイドの免疫組織化学染色により、前駆細胞マーカー(A)SOX9、(B)SOX2、(C)PDX1、上皮マーカー(A, B, F)E-カドヘリン、増殖マーカー(D)Ki67、胃密着結合マーカー(E)CLDN18の発現が確認されました。(E)腺領域でのMUC6発現により、腺細胞の存在が検出されました。(F)PGCの散在性発現の検出により、主細胞の分化が示されました(n = 2-5)。スケールバー = 100 μm。

 

参考文献

関連リンク

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