研究者の声
2023/01/30
クリックケミストリーを用いたO-GlcNAc型糖鎖研究に活用 研究者の声【36】
Dynabeads Streptavidinは一般的にビオチン化抗体やタンパク質、ビオチン化DNA/RNAと組み合わせたアプリケーションが多く知られていますが、DBCO-PEG-biotinのようなクリックケミストリー用の試薬と組み合わせてアジド化合物を標識後、磁気ビーズより分離することも可能です。今回はDynabeads Streptavidinを用いたO-GlcNAc型糖鎖修飾タンパク質の研究についてご紹介いたします。
研究者紹介
岡村 裕彦 先生
岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 口腔形態学分野 教授
Heriati Sitosariさん
Dept. of Oral Biology, Faculty of Dentistry, Universitas Gadjah Mada, Yogyakarta, Indonesia 55281
※ 所属や役職等は掲載当時のものです
研究内容
タンパク質の翻訳後修飾はその機能や分解に大きな影響を与えます。中でも,近年,O-GlcNAc transferase (OGT)によるO-GlcNAc型糖鎖修飾は発生や癌化に深く関与することが報告されています。しかしながら,O-GlcNAc型糖鎖修飾を受けるタンパク質を網羅的に解析した研究は少ないです。本研究の目的は,「O-GlcNAc型糖鎖修飾をもつ蛋白質を選択的に抽出すること」です。そのため,AzidoとDBCOのクリックケミストリー反応とBiotin-Avidin相互作用を応用し,Dynabeadsを用いた新たな手法を試みました。
実験方法・結果
参考図.AzidoとDBCOによるクリックケミストリー反応
本実験では,Dynabeads Streptavidin Trial Kit中の4種類のビーズ(M-280, M-270, C1, T1)を用いました。
実験方法
- HEK293細胞を培養し,O-GlcNAc型糖鎖修飾の基質であるN-azidoacettylgalactosamine-tetraacylated (Ac4GalNAz)を200 µM加えた。
- 16時間後,細胞からタンパク質を抽出し,200 µM DBCO-PEG4-Biotinを加えてクリックケミストリー反応を行った(1時間室温でローテーション)。
- サンプルを4等分し,Dynabeads-streptavidin(それぞれ25 µl)を用いてBiotin-Avidin相互作用により目的タンパク質の沈降を行った。
- このタンパク質をSDS-PAGEで分離後,銀染色(Silver staining)および抗O-GlcNAc抗体を用いたウエスタンブロットを行い,O-GlcNAc型糖鎖修飾をもつタンパク質について解析した。
Silver stainingの結果から,用いた4つのビーズは,ほぼ同濃度のタンパク質を抽出できたとみられました。しかしながら,抗O-GlcNAc抗体を用いたウエスタンブロットでは,C1あるいはT1ビーズが最も効率的にO-GlcNAc型糖鎖修飾を含むタンパク質を抽出しました。
Dynabeadsを使用しての感想
今回は,O-GlcNAc型糖鎖修飾をもつタンパク質の検出にトライアルキットに付属されている4種類のビーズを試しました。予想以上にビーズ間の適応性に違いがあると感じました。今回は,C1あるいはT1ビーズが最も効率良く実験対象によって,適応性が最も良いビーズが異なると思われます。そのため,トライアルキットなどを用いて多種類のビーズを用いた予備実験を行い効率よく沈降できるものをみつけることをお勧めしたいです。また,専用のマグネットも扱いやすく性能は満足のいくものでした。比較したわけではないが,磁気ビーズの効率的な回収も実験の結果を左右するものと思われました。
今後の展望
細胞内でOGTによりO-GlcNAc型糖鎖修飾をうけるタンパク質は,血糖状態を含む様々な刺激下において,大きく変化が生じると考えられます。本結果に基づき,今後はC1あるいはT1ビーズを用いてO-GlcNAc型糖鎖修飾を受けるタンパク質を様々な条件下で効率的に抽出し,質量分析を用いて解析する予定です。
関連製品
商品コード | 商品名 | 梱包単位 |
---|---|---|
DB65801 | Dynabeads Streptavidin Trial Kit | 1 mL x 4 |
DB12321 | DynaMag-2 | 1個 |