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研究者の声

2024/03/01

同種造血幹細胞移植後 CD34+ キメリズム解析の検討 研究者の声【42】

  • 細胞分離

造血幹細胞移植関連検査において細胞分離を実施することは、検査の感度を向上させるために有用とされています。今回、STEMCELL Technologies社の細胞分離試薬を使い、異なる種類の検体(末梢血・骨髄血)から同じワークフロー、かつ高精度のキメリズム解析を実施可能なプロトコルを確立した先生の研究をご紹介します。

研究者紹介

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大山 幸永 様(写真手前向かって右側)

神戸市立医療センター中央市民病院
臨床検査技術部

神戸市立医療センター中央市民病院 臨床検査技術部HP

※ 所属や役職等は掲載当時のものです

研究の背景

同種造血幹細胞移植後のキメリズム解析は、生着や再発のモニタリングに重要な検査である。さらに細胞系統特異的キメリズムは全白血球キメリズムでは検出できないレシピエント細胞の増加を捉えることができ、再発の早期発見に有用であることが知られている(図1)。
移植片拒絶および再発発見のため、当院ではEasySepTM HLA Chimerism Whole Blood CD3 Positive Selection Kitを使用し、CD3陽性細胞とCD3陰性細胞のドナーキメリズム(CD3+DC、CD3-DC)解析を行ってきた。
今回、より鋭敏な再発指標としてCD34陽性細胞ドナーキメリズム(CD34+DC)解析の検討を行った。

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図1.細胞分離によるレシピエントDNAの検出模式図

方法および材料

造血幹細胞移植後、再発を来した急性骨髄性白血病(AML)4症例の骨髄血および末梢血を対象とした。CD34+細胞は、 SepMateTM-15およびRosetteSepTM Human Hematopoietic Progenitor Cell Enrichment Cocktailで前処理後、”The Big Easy” EasySepTM MagnetEasySepTM Human CD34 Positive Selection Kit Ⅱで分離した。
キメリズム検査はshort tandem repeat (STR)-PCRを原理とし、フラグメント解析で得られたピークのエリア値からDC%を算出した。CD3+DC、CD3-DC、WT1 mRNA定量、フローサイトメトリー(FCM)検査結果と比較し、 CD34+DCの再発指標としての有用性を検討した。

検討結果

4症例に共通し、WT1 mRNAの上昇、FCMでの腫瘍細胞比率の増加とともにCD34DCの低下が認められた。また、同一検体におけるCD3+DC、CD3-DCに比べ、CD34DCは顕著な低下を示した。

最も高感度に再発を検出できた症例Aを図2-4に示す。移植後144日目にマルチパラメトリックFCMにより腫瘍細胞0.18%を認めた。CD3DC、CD3-DCは100%であった(図3a、3b:レシピエント細胞の増加を捉えられていない)。
CD34を標的とした細胞分離処理により、分離前2.2%であったCD34+細胞は純度90%に分離濃縮することができた(図2)。分離濃縮後に実施したCD34+DCは84%に低下するとともにレシピエント細胞を検出でき、早期再発をとらえることができた(図3c、4)。

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図2.分離濃縮前後のCD34陽性細胞比率
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図3.day144 STR-PCR結果
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図4.早期再発を検出し得た症例

まとめ

本検討で使用したSTEMCELL Technologies社の分離試薬は高額な装置が不要であり、院内でのCD34⁺キメリズム検査が可能となる。
今回の検討からCD3+DC、CD3-DCと比較し、より鋭敏に腫瘍細胞の存在をとらえることができた。CD34+DCの再発指標としての有用性は文献等でも報告されており、特に遺伝子検査やFCMでのMRD検出が困難な症例において有効であると考えられる。

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