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ラーニングコーナー

2022/02/22

よくある質問 ~ヒト気道細胞の気液界面培養~

  • 用途別細胞培養

PneumaCult™をもちいてヒト気道上皮細胞(Human Airway Epithelial Cell, HAEC)を気液界面(Air-Liquid Interface, ALI)で培養する際に、よくある質問とその回答をまとめました。関連する技術資料もあわせてご紹介しています。

本稿の内容は、STEMCELL Technologies社ウェブサイトの記事 Frequently Asked Questions on Human Airway Air-Liquid Interface Culturesに基づいております。

一般的な質問

一般的によくいただく質問にお答えします。
質問をクリックしていただくと回答が表示されます。
どのPneumaCult™ 培地を使用すればよいですか? PneumaCult™ 製品ラインは、ヒト気道上皮細胞(HAEC)を培養するための、血清およびウシ脳下垂体抽出物(BPE)を含まない培地です。
PneumaCult™-Ex Plus Mediumは、プライマリーのヒト気管支上皮細胞(human bronchial epithelial cell, HBEC)またはヒト小気道上皮細胞(human small airway epithelial cell, HSAEC)を2次元の接着培養で増殖するために最適な選択肢です。
HBECまたはHSAECを気液界面(ALI)で分化するには、それぞれPneumaCult™-ALI Medium または PneumaCult™-ALI-S Mediumを使用します。
HBECを3次元の気道オルガノイドに分化するには、PneumaCult™ Airway Organoid Kitを使用できます。
HBECまたはHAECを外側に頂端面をもつ気道オルガノイドに分化するには、PneumaCult™ Apical-Out Airway Organoid Mediumを使用できます。
ヒト気道上皮細胞(HAEC)の培養において、PneumaCult™-Ex Medium とPneumaCult™-Ex Plus Medium の違いは何ですか? PneumaCult™-Ex MediumPneumaCult™-Ex Plus Mediumは、それぞれPneumaCult™ 製品ラインの第一と第二世代の増殖用培地です。
市販されている他の増殖用培地と比べて、継代あたりの増殖に優れ(集団倍加が少なくとも2倍)、より長期の継代(少なくとも2回の追加継代)後でも粘膜繊毛分化の能力を堅牢に維持することができるPneumaCult™-Ex Plus Medium の使用を推奨します。

PneumaCult™-ALI Medium と PneumaCult™-ALI-S Mediumは互換性がありますか? いいえ、これらの培地に互換性はありません。
大気道と小気道の最も代表的な培養物を生成するために、HBECはPneumaCult™-ALI Medium、HSAECはPneumaCult™- ALI-S Mediumでそれぞれ分化することを推奨します。
各培地で培養したHSAECとHBECの形態とマーカー発現の比較は、製品ページ(データ紹介)でご確認ください。

HBECをPneumaCult™-ALI Mediumで培養しています。気液界面(ALI)で分化した後の気道細胞タイプの分布はどうなりますか? PneumaCult™-ALI Mediumで培養したHBECは、分化後におおよそ以下の分布で細胞型を生成します。
• 基底細胞 (~20 - 30%)
• 線毛細胞 (~50%)
• 杯細胞 (~5 - 10%)

また、PneumaCult™-ALI Mediumで培養したHBECから、より希少なionocyte(肺塩類細胞)のような細胞型の生成も可能であると報告されています。
HSAECをPneumaCult™-ALI-S Mediumで培養しています。気液界面(ALI)で分化した後の気道細胞タイプの分布はどうなりますか? PneumaCult™-ALI-S Mediumで培養したHSAECは、分化後におおよそ以下の分布で細胞型を生成します。
• 基底細胞 (~5 - 10%)
• 線毛細胞 (~60 - 80%)
• クラブ細胞 (~5 - 10%)

※クララ細胞または細気管支外分泌細胞とも呼ばれる

材料とプレート準備に関してよくある質問

材料とプレートの準備についてよくいただく質問にお答えします。
質問をクリックしていただくと回答が表示されます。
細胞培養インサートはどれを使うのがよいですか? PneumaCult™-ALI Medium およびPneumaCult™-ALI-S Mediumをもちいて気道上皮細胞を気液界面(ALI)培養するには、孔径0.4 μmのポリエステル膜インサートの使用を推奨します。
24ウェルプレートにはCostar® 6.5 mm Transwell®, 0.4 µm Pore Polyester Membrane Inserts(ST-38024)、12ウェルプレートにはCostar® 12 mm Transwell®, 0.4 µm Pore Polyester Membrane Inserts(ST-38023)をご利用ください。
どちらもPneumaCult™をもちいた最適なALI培養をサポートすることが検証されています。

推奨品のTranswell® Insertsを使用すると、他の製品と比較してALI培養物の形態が改善し、上皮細胞マーカー発現が高くなります(データはこちら)。

ハイスループットアプリケーションのためのスケールアップはどのように実施しますか? HSAECのALI培養は、PneumaCult™-ALI-S Medium および HTS Transwell®-96, 0.4 µm Pore Polyester Membrane Inserts (ST-100-0419) を使用することで、96ウェルフォーマットまでのハイスループットスクリーニング(HTS)アプリケーションをサポートできるとの報告があります。

• Bluhmki T et al. (2020) Development of a miniaturized 96-Transwell air–liquid interface human small airway epithelial model. Sci Rep 10(1):13022.

HBECの培養も、PneumaCult™-ALI Medium およびHTS Transwell®-96をもちいて、同様に96ウェルプレートで行われています。

インサートをコラーゲンでコーティングする必要はありますか? Transwell®インサートおよび組織培養処理された細胞培養フラスコに対するコラーゲンコートは、HAECをPneumaCult™-Ex Plus Mediumで増殖する際、およびPneumaCult™-ALI Medium や PneumaCult™-ALI-S Mediumで分化する際には必要ありません。
これまでにコートと非コートの条件間でいかなるパフォーマンスの違いも見られておりません。
しかしながら、コラーゲンコートはドナーにより、あるいは新鮮な単離細胞を取り扱う際に分化を改善する可能性があります。

サンプル準備に関してよくある質問

サンプル準備についてよくいただく質問にお答えします。
質問をクリックしていただくと回答が表示されます。
ALI培養の樹立はどの供給元のプライマリー気道上皮細胞で検証しましたか? プライマリー気道上皮細胞の市販品は多くあります。
STEMCELL Technologies社ではこれまでに2社(LonzaとEpithelix)のHAECで検証を行い、どちらもALI培養に成功しました。

PneumaCult™は鼻粘膜上皮細胞の培養をサポートしますか? 鼻粘膜上皮細胞について直接の検証は行っておりませんが、PneumaCult™が同細胞タイプをサポートするとの報告があります。
以下の各文献をご参照ください。

PneumaCult™-Ex Plus Mediumによる増殖:
• Villamizar et al. (2019) Targeted Activation of Cystic Fibrosis Transmembrane Conductance Regulator. Mol Ther 27(10): 1737–48.

PneumaCult™-ALI Mediumによる分化:
• Müller L et al. (2013) Culturing of human nasal epithelial cells at the air liquid interface. J Vis Exp (80): 50646.
• Cao H et al. (2015) Testing gene therapy vectors in human primary nasal epithelial cultures. Mol Ther Methods Clin Dev 2: 15034.
• Schogler A et al. (2017) Characterization of pediatric cystic fibrosis airway epithelial cell cultures at the air-liquid interface obtained by non-invasive nasal cytology brush sampling. Respir Res 18(1):215.
• Garcia et al. (2019) Novel dynamics of human mucociliary differentiation revealed by single-cell RNA sequencing of nasal epithelial cultures. Development 146(20): dev177428.
• Dobzanski et al. (2018) Nasal polyp fibroblasts modulate epithelial characteristics via Wnt signaling. Int Forum Allergy Rhinol 8(12):1412–20.

PneumaCult™はマウス気道上皮細胞の培養をサポートしますか? PneumaCult™のマウス上皮細胞への使用は検証しておりませんが、同アプリケーションの報告があります。
以下文献をご参照ください。

PneumaCult™-ALI Mediumによるマウス上皮細胞の培養:
• Tata et al. (2013) Dedifferentiation of committed epithelial cells into stem cells in vivo. Nature 503(7475): 218–23.
• Johnson et al. (2018) Fank1 and Jazf1 promote multiciliated cell differentiation in the mouse airway epithelium. Biol Open 7(4): bio033944.

セットアップと培養に関してよくある質問

セットアップと培養に ついてよくいただく質問にお答えします。
質問をクリックしていただくと回答が表示されます。
PneumaCult™-Ex Plus Mediumで増殖した培養物はいつ継代すればよいですか? PneumaCult™-Ex Plus Mediumで培養したHBECおよびHSAECは、50 -60%コンフルエンスに到達したら継代してください。
HBEC培養における細胞形態は、プロトコール動画(02:45~)でご確認ください。
HBECの最適な分化のためには、どの継代の増殖細胞からALI培養を開始すればよいですか? PneumaCult™-Ex Plus Mediumで増殖した早期継代(P3/P4)のHBECから開始したALI培養が、最も適切な形態を示します。
ドナーに依存し、ドナーによる変動が予想されるものの、PneumaCult™-Ex Plus Mediumで増殖した中期から後期継代のHBECも偽重層粘膜繊毛分化を示すことができます。
念のため、P7/P8より後の継代から分化アッセイを開始しないよう推奨します。
異なる継代数のHBECをPneumaCult™-ALI Mediumで分化した際の、細胞形態の比較は製品ページ(図6)でご確認ください。

HSAECの最適な分化のためには、どの継代の増殖細胞からALI培養を開始すればよいですか? PneumaCult™-Ex Plus Mediumで増殖した早期継代(P3)のHSAECから開始した時に、最も良い結果が見られます。
ドナーに依存し、ドナーによる変動が予想されるものの、中期継代(P4/P5)のHSAECも一般的に許容される結果を示すことが可能です。
念のため、P5/P6より後の継代から分化アッセイを開始しないよう推奨します。

インサート内で液内培養物のエアリフトへの準備ができたかどうかはどのように判断しますか? エアリフト(細胞頂端側を空気に触れさせる)の実施前に、インサート内で増殖した液内培養物が100%のコンフルエンスに達することが非常に重要です。 100%コンフルエンスにおいては、細胞がインサート表面全体を覆い完全で均質な単層を形成します。
エアリフトの準備が整い、望ましいコンフルエンスに到達したHBEC培養の状態は、プロトコール動画(07:00~)でご確認ください。
製品添付文書での推奨密度より高い密度で細胞を播種し、2~4日より前にコンフルエンスに到達しました。エアリフトに移行しても良いですか? はい、液内培養が100%コンフルエンスに到達すればエアリフトの準備はできています。

気液界面培養はPneumaCult™-ALI Medium または PneumaCult™-ALI-S Mediumによってどのくらいの期間維持できますか? 実験者の無菌操作とプロトコール順守の程度に依存しますが、分化したHBECはPneumaCult™-ALI Maintenance Mediumで何年も維持することができます。
STEMCELL Technologies社では最長で5年間維持しました。
PneumaCult™-ALI-S Mediumで分化したHSAECは少なくとも6か月間維持できました。

HSAECが完全に分化するにはどのくらいの期間がかかりますか? 一般的に、PneumaCult™-ALI-S Mediumで培養したHSAECは4~5週間後に完全に分化した立方上皮を形成します。
ドナーによる変動は予想されます。

PneumaCult™-ALI Medium および PneumaCult™ALI-S Mediumで維持している培養物の粘液はいつ、どのくらいの頻度で洗い流せばよいですか? PneumaCult™-ALI Mediumでの培養3週目から週に一度、細胞表面の粘液を洗浄することができます。
粘液の蓄積量によっては、2回目の洗浄が必要になることもあります。
粘液洗浄の実施方法はプロトコール動画(02:24)でご確認ください。
PneumaCult™ALI-S Mediumのプロトコールでは、粘液洗浄の工程は不要です。
培養物の粘液が分厚いです。PBS洗浄を向上させる方法はありますか? より分厚い粘液を取り除くには、頂端側にD-PBS without Ca++ and Mg++(ST-37350)を加え、培養物を37℃で10~20分インキュベートします。

凍結保存に関してよくある質問

凍結保存についてよくいただく質問にお答えします。
質問をクリックしていただくと回答が表示されます。
PneumaCult™-Ex Plus Mediumで増殖したHAECを凍結保存できますか?凍結用培地の推奨品はありますか? はい、HAECは凍結保存できます。
培地にCryoStor® CS10(ST-07930)を使用し、1 x 106 cells/mLの密度で凍結することを推奨します。

特性解析に関してよくある質問

特性解析についてよくいただく質問にお答えします。
質問をクリックしていただくと回答が表示されます。
HBECのALI分化アッセイが成功しているかどうかをどのように判断できますか? 良好な分化と、さらなる特性解析への準備ができていることを示す培養中の形態的指標は2つあります:
• ALI培養物の頂端表面で明らかに波打つ繊毛
• 繊毛の協調する拍動によって一掃される分泌粘液の可視化

PneumaCult™-ALI-S Medium とPneumaCult™-ALI Mediumで培養した小気道(HSAEC)と大気道(HBEC)それぞれの局所的な特異性はどのように評価しますか? 小気道と大気道の局所特異性を評価するためには、以下のアッセイを実施することができます:
• 組織切片のヘマトキシリン・エオシン(HE)染色による、小または大気道上皮の厚さ評価
• 免疫細胞化学(ICC)と蛍光イメージングによる、局所特異的マーカー発現の可視化
• qPCRによる、局所遺伝子発現における差異の評価

PneumaCult™-ALI-S Medium または PneumaCult™-ALI Mediumで培養したHSAEC とHBECの形態およびマーカー発現の比較は、製品ページ(データ紹介)でご確認ください。

完全に分化したALI培養物に免疫細胞化学(ICC)染色を実施するための、プロトコールまたは推奨の抗体はありますか? はい、ALI培養した上皮細胞にICC染色を行うプロトコールがございます。
以下は、気道培養物の特性解析に使用できる抗体のリストです。
製品 商品コード(例) 培養タイプ
Acetylated Tubulin ST-100-0753 Sigma-Aldrich, T7451 大・小気道ALI培養
Anti-Mucin 5AC Antibody Abcam, ab212636 大気道ALI培養
ZO-1Antibody ST-100-0750 Invitrogen, 40-2200 大気道ALI培養
CC10 Antibody (SCGB1A1) Santa Cruz Biotechnology, sc-365992 小気道ALI培養
Anti-SCGB3A2 Antibody Abcam, ab181853 小気道ALI培養


経上皮電気抵抗(TEER)を測定するためのプロトコールはありますか?測定はいつ行えばよいですか? ALI培養における上皮バリアの完全性を評価するためのTEER測定のプロトコールがあります。
TEER測定は細胞培養にダメージを与えず繰り返し実施することができます。
ALI培養での分化過程全体を通してバリア機能を記載するため、毎週TEERの経時的測定を実施できます。
TEERの読み取りは、培養物を電気生理学や気道マーカー発現などのエンドポイントの特性解析で評価する前に行うこともできます。 TEER値がALI培養物の形態とどのように相関するかについては、動画をご覧ください。

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