ラーニングコーナー
2018/04/10
独創的な肝オルガノイド培養系:改善法 vs. 従来法の比較!「HepatiCult」
- 用途別細胞培養
肝オルガノイドは肝細胞の自家移植の評価だけでなく、in vitroでの疾患モデリングのための潜在的な可能性も有します。薬物スクリーニングで使用するための肝臓疾患モデリングおよび正常細胞や疾患細胞のバイオバンクの確立が、近い将来に実現する可能性があります。
「HepatiCult」開発の経緯
「HepatiCult」開発の経緯
Huchら(Dr.Hans Clevers研究室)は、in vitroで無限に増殖(> 1年間)を可能にする独創的な肝幹細胞由来肝オルガノイドへの培養系(間葉ニッチ不要の条件でdefinedな培地)を開発しました。得られた肝オルガノイドは、in vitroで肝細胞機能を示します。
STEMCELL Technologies社の「HepatiCult Mouse Organoid Growth Medium」(以下「HepatiCult」と表記、製品コード:ST-06030)は、Huchらが開発した方法(Huch et al., Nature 2013)に基づいて改良し、よりシンプルな肝オルガノイド培養系を提供します。
HepatiCultは下記の文献を元に開発されています。
肝オルガノイド形成方法の比較(改善法 vs. 従来法)概要
Lgr5陽性細胞は肝臓が種々の障害を受けたときに特異的に出現します。すなわち、正常な肝臓には存在しません。
従来法との比較:「HepatiCult」のメリット
- 肝障害・肝管のハンドピッキングが不要
- フローサイトメトリーによる幹細胞のソーティングが不要
- 肝細胞含有肝管のエンリッチメントに最適された酵素消化カクテル・プロトコール
- 成分が明確な無血清培地
- 4~5日間で肝オルガノイドを形成可能
肝オルガノイドの形成 ワークフロー
7日間でオルガノイドの芽を形成
Matrigelに埋め込んでHepatiCultで培養した肝管は、7日間でオルガノイドの芽を形成
肝管は最初に管末端からオルガノイドの芽を形成し、オルガノイドもまた管側から成長します。 シングルのオルガノイドは、消化で得られた小さな肝臓断片から形成する可能性もあります。(Scale bar, 200 μm)
肝オルガノイドの形態
特徴的な肝細胞様形態を示す肝前駆細胞由来オルガノイド
得られたオルガノイドは、肝細胞に典型的な形態(タイトジャンクション、二核、多角形)および増殖能を示します。上図は20回継代した肝前駆細胞由来オルガノイドです。
HepatiCultで培養した肝前駆細胞由来肝オルガノイドの免疫細胞化学分析
播種した肝管から出現している肝臓オルガノイドの陽性染色免疫細胞化学分析
染色マーカー:上皮膜貫通膜タンパク質(EPCAM)、タイトジャンクションタンパク質(ZO-1)、肝側底膜からグルタチオンを流出する多剤耐性タンパク質(MRP4)、前駆細胞マーカー(SOX9)、肝転写因子(HNF4)。(Scale bar, 100 μm)