ラーニングコーナー
2020/04/09
ヒト気道 in vitro 3Dモデル 肺オルガノイドの3次元培養「PneumaCult-ALI」
- 用途別細胞培養
「PneumaCult™による呼吸器ウイルス感染の研究」最新情報
肺に関する基礎的・臨床的研究において、従来の2次元(2D)細胞培養モデルを用いてさまざまな研究がおこなわれてきました。しかし、臨床上で得られる観察結果と2D細胞培養モデルを用いたin vitroの結果を比較した場合、2D培養モデルは生体内の環境とは大きく異なり、組織的な違いがあるため、双方の研究における相違を説明することはできませんでした。
肺オルガノイド確立への背景
肺オルガノイド確立への背景
最近の肺上皮前駆細胞および間質細胞単離法の進歩ならびに肺発生に重要な幹細胞ニッチ因子は、肺オルガノイド(pulmonary/lung organoid)(※)と呼ばれるin vitro 3次元(3D)培養系の確立につながりました。 肺オルガノイドは呼吸器の基礎研究や毒性研究および薬物開発のための貴重なツールとなり得ます。そのロバストでdefinedな3Dシステムを紹介いたします。
※ 肺オルガノイド培養システムは、気道上皮細胞のin vitro 3次元培養を指します。本稿では、気道上皮細胞の種類の違いによって、気管支上皮細胞由来肺オルガノイド(bronchospheres pulmonary organoid)・気管上皮細胞由来オルガノイド(tracheosphere pulmonary organoid)などと表しています。
PneumaCult-ALIで生成された気管支細胞由来 肺オルガノイドの形態
【動画】光学顕微鏡による観察:PneumaCult-ALIで培養した気管支細胞由来の肺オルガノイド
この動画では、肺オルガノイドの内腔内にある繊毛のビィーティングによって旋回している内腔の粘液を示しています
肺オルガノイドの3D培養法
最適化されたPneumaCult-ALIの3D培養系
PneumaCult-Ex Plus(または-Ex)による液中培養で増殖させたヒト気管支上皮細胞(HBECs)を、気液界面(Air-Liquid Interface, ALI)培養(下図右上)、またはマトリゲル上でのオルガノイド培養(下図右下)に移行して分化させることができます。
PneumaCult-Ex Plus(製品コード:ST-05040)およびPneumaCult-ALI(製品コード:ST-05001)は、in vitro気道モデリング用の完全に統合されたBPE(ウシ下垂体抽出物)フリーの培養システムを構成します。
PneumaCult-ALIによるオルガノイド培養では、凝固したMatrigel層の上に播種したプライマリー気管支上皮細胞(HBECs)もしくは気管上皮細胞(HTEpC)(※)から、2〜4週間以内に肺オルガノイドを形成可能です。
この3D培養系により、ヒト気道をin vitroで再現することができます。得られた肺オルガノイドは、杯細胞(粘液を内腔に分泌可能)および内腔を向く繊毛細胞を含む自己組織化偽重層上皮を形成します。
この培養技術は、細胞培養のためのインサートを必要とせず、そのためハイスループット培養を容易にするin vitroで気道モデリングの代替法となります。
※ 肺胞上皮細胞(HPAEpiC)は、STEMCELL Technologies社での検討はされていません。
参考文献: 肺胞上皮細胞を培養した例(Qi Tan et al)
気管支上皮細胞由来 肺オルガノイドのHE染色およびPAS染色
肺オルガノイドのHE染色では内腔を向いている繊毛細胞(黒矢印)の存在が、PAS染色では杯細胞(赤矢印)の存在が示されています。
疾患モデルのアプリケーション例
ALI培養システムは呼吸器生物学、感染および疾患研究のための生理学的に適切なモデルを提供します。
- 喘息
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
- 杯細胞過形成および過分泌
- 嚢胞性線維症
動画・ウェビナーのご案内
肺オルガノイドに関する情報
肺オルガノイドの動画、ウェビナー、インタビューはこちら>>
動画:PneumaCult-ALI 気管支上皮細胞のALI培養に最適化された培地
<演者>Dr. Michael Riedel
<内容>PneumaCult-ALIの機能、利点、アプリケーションについての説明
ウェビナー:PneumaCult™-ALI: An Improved Medium Formulation for the Differentiation of Human Bronchial Epithelial Cells
STEMCELL Technologies社が提供するウェビナーです(視聴にはSTEMCELL Technologies社のホームページ上でのログインが必要です)。
<演者>Dr. Sam Wadsworth(James Hogg Research Centre at the University of British Columbia)
<内容>生理学的関連性の高い気管支上皮培養は、達成が難しい場合があります。PneumaCult™-ALI培地は、気液界面(ALI)で培養されたヒト気管支上皮細胞の粘液繊毛分化をサポートします。 このウェビナーでは、ALI培養の特徴およびアプリケーションの概要を解説します。また、PneumaCult™-ALIの性能に関するデータと、培養に用いることで達成できる優れた生理学的関連性についても論じます。