ラーニングコーナー
2017/08/03
StemSpanアプリケーション:ヒト造血幹細胞のCRISPR/Cas9ゲノム編集による血液疾患治療の研究
- 用途別細胞培養
2016年11月のNatureの論文で、ヒト造血幹細胞を用いてβサラセミアの原因遺伝子であるβグロビン遺伝子に対し、CRISPR/Cas9システムによる遺伝子編集を行った例が発表されました(DP Dever et al., 2016)。さらに、近年CRISPRシステムがPD-1およびCAR-T細胞によるがん免疫療法に応用されつつあるなど、ゲノム編集は現在最もホットな研究手法の一つになっています。ヒト造血幹細胞を使用する際、CRISPRでゲノム編集された造血幹細胞・前駆細胞(HPSCs)を移植するために、編集されたHPSCsのex vivoでの大量培養が必要です。
STEMCELL Technologies社の無血清培地「StemSpan」は、優れたHPSCsの増殖能を示し、ex vivoでの拡大培養および分化に最適です。
今回、「StemSpan」を使用してゲノム編集前後のHSPCsを増殖・分化させることにより、血液疾患の新しい細胞治療を提案した論文をご紹介します。
文献紹介
StemSpanを使用したCRISPRゲノム編集に関する文献
- CRISPR/Cas9 β-globin gene targeting in human haematopoietic stem cells. DP Dever et al. Nature 2016 NOV.
- Mast cells form antibody-dependent degranulatory synapse for dedicated secretion and defence. Joulia R et al. Nature communications 2015 JAN.
- Attenuation of miR-126 activity expands HSC in vivo without exhaustion. Lechman ER et al. Cell stem cell 2012 DEC.
- Selection-free genome editing of the sickle mutation in human adult hematopoietic stem/progenitor cells. DeWitt MA et al. Science Translational Medicine 2016 OCT.
StemSpan製品をゲノム編集に利用
DP Deverらの文献(上記文献1)とDeWitt MAらの文献(同4)では、CRISPR/Cas9ゲノム編集前後におけるHPSCsのex vivo増殖・分化に、STEMCELL Technologies社のStemSpan培地およびサプリメント(StemSpan CC110、StemSpan Erythroid Expansion Supplement)を使用しています。
StemSpanについて
StemSpan 製品概要
STEMCELL Technologies社は、造血幹細胞および造血前駆細胞の維持・増殖をサポートする血清代替物や無血清培地のリーディングサプライヤーとして、「StemSpanシリーズ」を提供しています。
製品例
- StemSpan SFEM/SFEM II:無血清培地
- StemSpan H3000:ゼノフリー培地(ヒト由来タンパク質または組み換えヒトタンパク質のみを含有)
- StemSpan ACF:動物由来成分不含培地
- 各種サプリメント:リンパ系・骨髄系の前駆細胞・lineage細胞への分化・増殖用
StemSpanの特徴
- 無血清
- HSPCsの優れた増殖能
- 長期培養が可能
- 目的に応じてサイトカインを添加可能
StemSpanのアプリケーション
- 骨髄(BM)・臍帯血(CB)・末梢血(PB)由来の造血幹細胞の増殖
- リンパ系および骨髄系の前駆細胞とLineage細胞の分化
StemSpan データ例
臍帯血由来CD34陽性細胞を、StemSpan Erythroid Expansion Supplementを加えたStemSpan SFEM IIで7日間(A)または14日間(B)培養後に形成したCD71+GlyA+細胞を、フローサイトメトリーで解析した例です。
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