STEMCELL Technologies TeSR TeSR-AOF 3D
- 研究用
- 新製品
TeSR™-AOF 3Dは、未分化のヒト胚性幹(ES)細胞およびヒト人工多能性幹(iPS)細胞を、3次元浮遊培養で凝集体として拡大・スケールアップするために開発された、動物由来フリー(animal origin-free [AOF])の培地です。TeSR™-AOFをベースにしており、浮遊培養におけるヒトES/iPS細胞生産のスケールアップに最適化した流加培養(fed-batch)プロトコールを提供します。この新しい流加培養ワークフローでは毎日の給餌で栄養分を補充し、非継代日の培地交換が不要なため時間と培地を節約できます
TeSR™-AOF 3Dシステムは、mTeSR™1(製品コード:ST-85850)、mTeSR™ Plus(ST-100-0276)、TeSR™-AOF(ST-100-0401)またはTeSR™-E8™(ST-05990)の各培地を使用して、Corning® Matrigel® hESC-Qualified Matrix(Corning #354277)、Vitronectin XF™(ST-07180)またはBiolaminin 521 LN(BLA-LN521)の各基質上で培養した細胞に適合します。また、様々な浮遊培養容器に適合します。
本培地とその構成要素の製造において、少なくとも二次レベルまでは動物あるいはヒト由来の原料を使用していません。すなわち、TeSR™-AOF 3Dは二次製造レベルまで動物性成分フリーです。TeSR™-AOF完全培地の調製に使用する、TeSR™-AOF 3D SeedまたはFeed Supplementの各ロットは、ヒト多能性幹細胞(hPSC)を用いた培養アッセイで性能テストされています。
注:本製品は研究用です。臨床用途でご利用予定の場合は弊社にご相談ください。
製品の特長
TeSR™-AOF 3Dをもちいて、ヒト多能性幹細胞を動物由来フリー(animal origin-free)の条件下で浮遊培養できます
- 二次製造レベルまで動物性原料不使用の培地を選ぶことで、補助材料選択におけるリスクを最小限に抑えられます
- 培地の全量交換が不要な流加培養給餌方式によって、時間と労力を削減できます
- 2次元培養からの馴化を必要とせず、高品質のhPSCを迅速にスケールアップできます
TeSR™-AOF 3Dの流加培養プロトコール
Gentle Cell Dissociation Reagent (GCDR; 製品コード:ST-100-0485) を用いて、高品質の接着性hPSC培養物を非酵素的に解離し細胞塊(cell clump)にします。細胞塊を、生存細胞数 0.5~1 x 105 個/mLでseed medium +10 μM Y-27632 (ST-72302) に再懸濁します。流加培養用のFeed supplementを、細胞塊の播種後24時間から1日目および2日目に添加します。4日間継代の3日目に培地を半量交換します。3~4日後、37 μm ストレーナー(ST-27215/27250)を用いて凝集体を回収し、GCDR中で37℃、6分間インキュベートします。GCDRを除去し、凝集体をseed medium +10 μM Y-27632に再懸濁します。再懸濁後すぐに、凝集体を37 μm ストレーナーで強制的に濾過し、細胞塊を作製します。細胞塊を、生存細胞数 0.5~1 x 105 個/mLで新しい培養容器に再播種します。3次元浮遊培養中の細胞では、未分化マーカーであるOCT4やTRA-1-60の高発現が維持されます。
詳しい使用方法は、本ページ下部の製品記事リンクより ”Technical Manual” をご確認ください。
TeSR™-AOF 3Dのデータ紹介
hPSC浮遊培養において、高い増殖能と生存率を維持します

Figure 1. TeSR™-AOF 3DをもちいたhPSCの拡大培養
TeSR™-AOF 3Dは、hPSC凝集体の浮遊培養における複数回の継代にわたって増殖および高生存率をサポートします。ヒトES細胞株(H1、H7)およびヒトiPS細胞株(WLS-1C、STiPS-F016)の5継代にわたる(A)累積生存細胞、(B)毎日の増殖倍率、(C)継代終了時の生存率を示します。エラーバーは±SD、n = 3を表します。
培養したhPSCは未分化マーカーを発現し、3胚葉に分化できます

Figure 2. TeSR™-AOF 3Dで培養したhPSCの未分化マーカー発現と、3胚葉への分化
TeSR™-AOF 3Dで5回継代した複数のhPSC株について、(A)OCT-4とTRA-1-60の発現、および(B)STEMdiff™ Trilineage Differentiation Kitを用いた3胚葉分化能(外胚葉:% Nestin+/Pax6+、中胚葉:% Brach+、内胚葉:% Sox-17+/CXCR4+)を示しています。エラーバーは±SD、n = 3を表します。
培養中のグルコースおよび乳酸の濃度を最適に維持します

Figure 3. TeSR™-AOF 3Dで培養中のhPSCの代謝プロファイル
(A) TeSR™-AOF 3Dのグルコース濃度は、培養期間中、最適なレベルに維持されています。点線はSeed完全培地中のグルコースレベルを示します。(B)乳酸濃度は、TeSR™-AOF 3Dで5回継代した複数のhPSC株で培養期間を通して低レベル(点線で示す15 mM以下)に維持されています。エラーバーは±SD、n = 3を表します。
複数のhPSC株にわたって、浮遊培養中の凝集体はhPSCの特徴的形態を示します

Figure 4. TeSR™-AOF 3D中のhPSC凝集体の形態
TeSR™-AOF 3Dで維持されている複数のhPSC株は、浮遊培養におけるhPSC凝集体に特徴的な形態、すなわち、ほぼ球形、明確な境界線(滑らかでも光沢でもない)、均一な色、点在するくぼみ、400 μm未満の大きさを示すことが確認されています。
シングルユースバイオリアクター(PBS MINI)での大量培養例を含む、詳しいデータは以下をご参照ください。
TeSR-AOF 3Dの性能に関する学会発表ポスター