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ラーニングコーナー

2024/06/04

CD138陽性細胞の濃縮による多発性骨髄腫の検査感度向上

  • 細胞分離

多発性骨髄腫は形質細胞が腫瘍化することによって起こる疾患です。染色体検査による診断にはおもにFISH法が用いられますが、形質細胞に含まれる腫瘍細胞の検出感度を向上させることにより、ゲノム異常の検出感度が向上します。
本ページでは、多発性骨髄腫の検査において形質細胞を濃縮するメリットや海外の状況をご紹介します。

多発性骨髄腫と診断方法

多発性骨髄腫とは

多発性骨髄腫(Multiple Myeloma:MM)は造血器腫瘍の一種で、骨髄中に存在する形質細胞(plasma cell)が腫瘍化する難治性の疾患です。形質細胞はB細胞から分化した細胞で抗体産生を担っていますが、異常細胞では異常な抗体(単クローン性免疫グロブリン:M蛋白)を産生するため、それらが様々な症状を引き起こします。多発性骨髄腫は造血器悪性腫瘍の10~15%を占めると言われており、高齢者に比較的多く、発症率・死亡率ともに年々増加傾向にあります。

多発性骨髄腫の診断

多発性骨髄腫の診断には血液検査、尿検査、骨髄検査などが実施されます。その内、骨髄検査では骨髄液中に存在する骨髄腫細胞の割合やゲノム異常の有無を把握するため、染色体検査などを行います。染色体検査で主に用いられるのは蛍光 in situ ハイブリダイゼーション(FISH)法です。

骨髄サンプルには悪性の形質細胞の他に、正常な核型を示す健常なB細胞と非悪性形質細胞が多く存在するため、FISH法の感度の限界から、少量の腫瘍の存在を見つけ出すことができない場合があります。ごくわずかな異常細胞を同定し解析するためには、大量の細胞を解析する必要がある場合も考えられます。

FISH法による腫瘍細胞検出感度を向上させるためには、検体中に存在する不要な細胞を除去し、形質細胞の割合を高める必要があります。

CD138抗原はすべての形質細胞(非悪性細胞と悪性細胞の両方)に存在する一方、成熟B細胞には存在しません。このため、CD138抗原は多発性骨髄腫細胞を含むすべての形質細胞の濃縮に適した選択マーカーとなり得ます。

EasySepを使用したCD138陽性細胞の分離濃縮方法

CD138陽性形質細胞の濃縮には、STEMCELL Technologies社のEasySep™製品をお勧めします。 EasySep製品は目的の細胞を抗CD138抗体とデキストランコートされた磁性粒子で標識し、標識した細胞をEasySep™ Magnetでカラムを使わずに分離します。不要な細胞は溶液を流すことで除去され、CD138陽性細胞はチューブ内に留まります。

形質細胞を濃縮することにより、分析サンプル中の悪性骨髄細胞の割合が高くなり、実検体の解析に比べ、ゲノム異常の検出感度が向上します。したがって、CD138の選択による形質細胞の濃縮は多発性骨髄腫のFISH検査の感度向上だけでなく、マイクロアレイによるゲノムプロファイリング、シーケンス検査の感度と信頼性を高めるうえで、有用なステップであると考えられます。

CD138陽性 形質細胞の分離にお勧めの試薬

EasySepを使用した形質細胞分離プロトコル

STEMCELL Technologies社では各検体(骨髄、全血、末梢血単核細胞)からCD138陽性 形質細胞を分離するためのプロトコールを紹介しています。

日本語版(STEMCELL Technologies社 ウェブサイトへ)

英語版(STEMCELL Technologies社 ウェブサイトへ)


動画マニュアル(STEMCELL Technologies社 ウェブサイトへ)※動画の視聴にはSTEMCELL Technologies社ウェブサイトにて登録が必要です)

自動化装置RoboSepとの組み合わせも可能

細胞分離の自動化装置「RoboSep™-S」と組み合わせることで、細胞分離をさらに効率よく簡便に実施できます。
1ランあたりのハンズオンタイムは約5分で、生体サンプルを扱う際に病原体にさらされるリスクを大幅に減らせます。

「RoboSep™」細胞分離の完全自動化と省力化

細胞分離による検査感度向上例

EasySep試薬およびRoboSep を使用し、骨髄サンプルからのCD138陽性 形質細胞の濃縮を行った例を紹介します。

分離前のFISH検査では多くの検体で感度以下となり、ゲノムの異常の有無が判別できませんでした。しかしEasySepを使用した分離濃縮により形質細胞の検出およびゲノムの正常・異常が明確に検出できました。異常細胞については4.5~96%に濃縮することができました。さらに形質細胞が低頻度 (1.5%および2%) だった場合にも、EasySepを使用することにより形質細胞が単離できたことが示されています。

分離濃縮前後におけるゲノム異常の検出割合(N=54)

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Shetty et al., Int J Hematol (2012) 95:274–281より作図

その他の文献に関しては日本語版プロトコルに記載されている参考文献を参照ください。

海外における検査の状況

諸外国ではFISH法またはG-bandによる染色体検査による多発性骨髄腫の診断を行う際、感度向上のために形質細胞での検査を推奨しています。

諸外国の現状に関しては、2022年4月に実施したウェビナーをご覧ください。

アメリカのNational Comprehensive Cancer Network(NCCN Guidelines Version 2.2020 Multiple Myeloma)は、FISH 法による多発性骨髄腫検査においては骨髄穿刺で採取後に濃縮した形質細胞で解析することを推奨しています。

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関連動画:多発性骨髄腫以外の血液がんにおける細胞分離の有用性

B細胞リンパ腫や多発性骨髄腫などの血液がんでは、悪性細胞と非悪性細胞が骨髄や末梢血にさまざまな頻度で混在します。FISH法による詳細な解析の前にリンパ細胞を濃縮すると、悪性細胞の存在が増加するため検出感度を高めることができます。

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