ラーニングコーナー
2020/06/16
ヒト間葉系幹細胞の培養を「MesenCult-ACF Plus」でアップグレードしませんか?
- 用途別細胞培養
ヒト間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cell:MSC)は、論文数が年々増加の一途をたどっており、MSCを用いた細胞治療の臨床試験も世界で400件近く実施中であるなど、非常にホットな研究対象です。MSCは幅広い組織に存在する体性幹細胞であり、その分化能や免疫調節作用による自己免疫疾患治療や組織再生への応用が期待されています。
MSCの研究には未だ課題が残っていますが、STEMCELL Technologies社の「MesenCult-ACF Plus」によってMSC培養にかかわる課題を解決することができます。
間葉系幹細胞について
骨髄間質は当初、骨髄の造血成分の構造骨格として機能すると考えられていました。それ以来、間質は異種細胞集団で構成されており、物理シグナルと化学シグナルの組み合わせによって骨髄中の造血幹細胞(HSC)の増殖・分化に対して正負両方の調節作用を有することが広く証明されています。また間質には間葉系幹細胞(MSC)と呼ばれる別の非造血細胞も含まれており、これらは自己複製することも、骨、軟骨、筋肉、腱、脂肪へ分化することも可能です。
MSCがHSCと非常に似ている点は、数が極めて少なく、骨髄細胞100,000個中1個という頻度でしか存在しないことです。MSCはまた、「Mesengenesis」と呼ばれる造血に類似した段階的成熟過程を経て種々の成熟細胞型を生じます。これらの細胞が骨形成原(骨)細胞を産生する能力を見るためのアッセイが開発されています。造血細胞と同じように、骨髄中に存在する間葉系前駆細胞の細胞表面表現型には不明な点が多く残っています。しかし、これらの細胞はコロニー形成線維芽細胞(CFU-F)アッセイでin vitroで定量することが可能です。線維芽細胞コロニーに由来する培養細胞は何代にもわたってさらに増殖することが可能であり、その後も種々の成熟細胞型に分化する能力は保持されます。より原始的な間葉系前駆細胞も存在すると考えられますが、多くの研究者達はこれらの培養細胞をその特徴から間葉系「幹細胞」と呼ぶようになりました。間葉系幹細胞の表面抗原は、CD45とCD34が陰性、CD105(SH2)、CD73(SH4)、CD90(Thy-1)が陽性と定義されています。
MesenCult-ACF Plusとは
「MesenCult-ACF Plus」は、ヒト間葉系幹細胞(MSC)の単離、培養およびコロニーアッセイ(CFU-F)に最適な、血清フリーかつ、動物由来成分を含まない(animal component-free, ACF)培地です。ヒト骨髄由来MSCsの多分化能や形態を保持したまま、in vitroで長期培養することができます。増殖効率が血清含有培地より優れているだけでなく、血清や血小板溶解物といったヒト・動物由来成分を一切使用しないため、より再現性と信頼性の高いMSC培養が可能になります。継代・保存用のACF製品を併用すれば、MSCの単離から保存まで完全に動物由来成分フリーの条件下で行うことが可能です。
MesenCult-ACF Plusの特長
- CONSISTENCY: 動物由来成分フリー(ACF)の組成により、再現性を向上させます
- HIGH-PERFORMANCE: MSC増殖効率は、血清含有培地より優れています
- FUNCTIONAL: 継代培養の初期から後期まで、MSCの3系統分化能を維持します
- OPTIMIZED: ヒト組織から直接、MSCを培養するために最適化されています
対象となる研究分野
ヒトMSCを用いた基礎研究
- 免疫調節メカニズム
- 様々な組織由来MSCの表現型や機能の特性解析
- MSC由来エクソソームの特性解析
ヒトMSCを用いた前臨床研究、トランスレーショナルリサーチ
- 炎症性疾患の治療法
- 創傷治癒と組織再生の促進
- がん治療薬の媒体としてのMSC
- 生存率と機能を保持したMSCの送達
- MSC由来エクソソームの治療応用
特に、こんな方におススメ!
- 培養によるMSCの免疫原性上昇や、表現型・機能の変化を抑えたい
- 3系統分化能を保持した高品質のMSCを増殖させたい
- 血清や血小板溶解物がMSCに与える影響を排除したい
MesenCult-ACF Plusの使用方法
製品ページより、添付文書をご確認ください:こちら>>
MesenCult-ACF Plus データ紹介
ヒト骨髄由来MSCのCFU-Fアッセイ
(A)骨髄単核細胞をMesenCult™-ACF Plusに播種した場合(n = 4)、100万細胞あたり平均45個のCFU-Fが観察されました。細胞を市販の培地1(n = 3)および培地2(n = 4)に播種した場合、100万細胞あたり平均47および25個のCFU-Fが観察されました。垂直線は平均の標準誤差(SEM)を示します。
(B)MesenCult™-ACF Plus培地(9日間の培養)、(C)市販培地1(10日間の培養)、および(D)市販培地2(10日間の培養)で拡大したCFU-Fコロニーの代表的な画像。市販培地1と2には、MSCを誘導するために2.5%のヒトAB血清を添加しました。MesenCult™-ACF Plus Mediumの使用時には、血清添加は不要です。
他の市販培地に比べ、ヒト骨髄由来MSCが速く増殖
(A)MesenCult-ACF Plus(n = 4)、市販培地1(n = 3)、市販培地2(n = 2)の増殖比較データ
(B) MesenCult-ACF Plus(n = 4)、市販培地1(n = 3)、市販培地2(n = 4)の倍加速度の比較データ
市販培地はいずれもゼノフリーおよび血清フリーの他社製品を使用。縦棒はSEMを表示。
増殖したヒト骨髄由来MSCは、多分化能を維持
(A)MesenCult-ACF Plusで増殖させたヒト骨髄由来MSC
(B)分化した脂肪細胞(Oil Red O染色、5継代)
(C)分化した軟骨細胞(Alcian Blue染色、4継代)
(D)分化した骨芽細胞(Alizarin Red S染色、5継代)
増殖したヒト骨髄由来MSCは、間葉系マーカーを高発現
骨髄由来のMSCをMesenCult-ACF Plusで増殖させ、継代8回目にフローサイトメトリー分析を行いました。間葉系表面マーカー(CD73、CD90、CD105)、周皮細胞マーカー(CD146)、造血マーカー(CD45)について染色しました。
MSCは高レベルのCD73、CD90、CD105およびCD146を発現し、CD45の発現を欠いていました。
その他の詳細なデータ(STEMCELL Technologies社ポスター)
ヒト間葉系幹細胞研究 製品選択ガイド
STEMCELL Technologies社の「MesenCult」シリーズは、ヒト間葉系幹細胞の分離、培養・増殖、凍結保存から分化までのラインナップを揃えています。MesenCult-ACF Plusを使用すれば、完全に動物由来成分フリーな条件でヒトMSCを継代、保存することができます。
(製品名は2018年9月現在)
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