ラーニングコーナー
2022/05/09
ハイブリドーマの作製効率が飛躍的に向上「EasySep™ & ClonaCell™」
- 細胞分離
- 用途別細胞培養
抗体を産生するB細胞とマウス骨髄腫細胞(ミエローマ)を融合させる「ハイブリドーマ」の技術により、モノクローナル抗体のスクリーニングと生産を可能にしました。しかし、ハイブリドーマはラボでの研究、免疫学的アッセイの開発、および前臨床開発でのモノクローナル抗体の作製に広く使用されているものの、作製工程が煩雑でほぼ改良されていないのが課題です。
本稿では、ハイブリドーマ作製工程の改善にSTEMCELL Technologies社が開発した細胞分離および培養用の製品を紹介します。
STEMCELL Technologies社発行の冊子版もご覧ください。
概要
EasySep™ Mouse CD138 Positive Selection Kit(商品コード ST-18957)は、マウス脾細胞からCD138+細胞を分離する製品です。抗体分泌細胞の濃縮に使用でき(図1, 2)、融合に十分な細胞を回収できます(図3)。全脾細胞を使用した場合と比較して、CD138+細胞との融合では抗体分泌ハイブリドーマの作製比率が高まりました(図3A)。さらに、CD138+細胞との融合によって、抗原特異的抗体を産生するハイブリドーマの割合が高まりました(図3B)。
スクリーニング、クローニング、および増殖中のハイブリドーマの生存は重要です。培地にDMEM + 10% FBSを使用した場合と比較して、ClonaCell™-HY Medium E(ST-03805)およびClonaCell™-HY AOF Expansion & Cloning Medium(ST-03835)はハイブリドーマの生存を改善し、抗体のスクリーニングとクローニングを血清含有培地または無血清培地のどちらでも確実に実施できるようにします(図4)。
ハイブリドーマ作製に「EasySep™ & ClonaCell™」を使用する理由
- 柔軟性 製品を既存の作製工程に簡単に統合
- 効率的 CD138+細胞を簡単かつ迅速に分離し、抗体産生細胞を選択的に融合
- シンプルで便利 ハイブリドーマの開発で時間のかかるステップを簡素化
- 汎用性 シングルセルクローニング、ハイブリドーマの増殖、および抗体産生をサポート
- 信頼性 厳密な性能評価によってロット間の再現性を保証
ハイブリドーマ作製のワークフロー
「EasySep™ & ClonaCell™」を用いたハイブリドーマの作製
免疫動物由来の解離した脾臓(または他のリンパ組織)と骨髄腫細胞を融合させてハイブリドーマを作製します。EasySep™ Mouse CD138 Positive Selection Kitは、融合前に抗体分泌細胞を濃縮します。抗体分泌細胞サブセットを融合に使用すると、スクリーニング対象となるクローン数が減り、抗原特異的クローンのヒット率が高まります。
ハイブリドーマを抗体分泌と標的特異性から選択し、目的のクローンをClonaCell™-HY Medium EおよびClonaCell™-HY AOF Expansion & Cloning Mediumで長期に安定化します。これらの培地は、抗体スクリーニングおよび単クローン性の検証中の生存と増殖をサポートするように設計されています。安定化したクローンは、機能検証に用いる抗体の作製に使用できます。
ClonaCell™-HY AOF Expansion & Cloning Mediumのような無血清培地での抗体産生により、血清由来の免疫グロブリンが存在しない条件で抗体の分析・精製が可能になります。
図1 「EasySep™ & ClonaCell™」を用いたハイブリドーマ作製 ワークフロー
データ紹介
EasySep™を用いた細胞分離でCD138+細胞の純度向上
EasySep™ Mouse CD138 Positive Selection Kitを使用して、免疫化したBALB/cマウスの脾細胞からCD138+細胞を単離しました。細胞分離の前後に、サンプルをフローサイトメトリーで分析しました。
図2 EasySep™ Mouse CD138 Positive Selection Kitを用いた細胞分離
(A)単離した細胞のうちCD138+細胞の割合は、通常 81.5 ± 4.9%(平均 ± SD)です。開始および最終分離画分の純度は、それぞれ 4.6% および 83.3% です。
(B)単離した細胞のうちCD138+CD267(TACI)+形質細胞/形質芽細胞の割合は、通常 68.5 ± 11.3%(平均 ± SD)です。開始および最終分離画分の純度は、それぞれ 1.3% および 70.2% です。
CD138+細胞の使用で抗体分泌および抗原特異的ハイブリドーマの比率向上
さまざまな抗原で免疫したマウス由来の全脾細胞または単離したCD138+細胞をClonaCell™-HY Medium A(ST-03801)で培養し、ClonaCell™-HY Medium B(ST-03802)で洗浄したSp2/0マウス骨髄腫細胞と融合させました。融合細胞をClonaCell™-HY Medium C(ST-03803)で培養して回復を促進し、半固形培地のClonaCell™-HY Medium D(ST-03804)に播種しました。
図3 抗体分泌および抗原特異的ハイブリドーマの比率
(A)ELISAで確認した抗体分泌ハイブリドーマの割合は、全脾細胞で33.0 ± 8.7%(平均 ± SD)に対し、単離したCD138+細胞では99.3 ± 0.6%です。
(B)ELISAで確認した抗原特異的な抗体分泌ハイブリドーマのヒット率は、全脾細胞で4.1 ± 1.6%(平均 ± SD)に対し、単離したCD138+細胞では28.8 ± 11.0%です。
ClonaCell™を用いたハイブリドーマ細胞株のクローニング効率向上
さまざまな抗原に対する特異的抗体を分泌するハイブリドーマクローンを、DMEM + 10% FBS、ClonaCell™-HY Medium E(血清含有培地)、ClonaCell™-HY AOF Expansion & Cloning Medium(無血清培地、動物由来フリー組成)のいずれかで限界希釈しサブクローン化しました。12〜14日間のインキュベーション(37°C、5% CO2)の後、顕微鏡下で増殖を評価しました。
図4 ハイブリドーマ細胞株のクローニング効率
(A)Hu & Smith(2009, J Immunol Meth, 347: 70 - 78)のELDA法を用いたポアソン統計によって推定されたクローニング効率。
(B)各培地中の10個のハイブリドーマ細胞株から得られた平均クローニング効率。 *Polymer 2の18回の実験とProtein 4の1回の実験で、DMEM + 10% FBSのクローニング効率は 0%でした。