ラーニングコーナー
2018/05/23
ヒトiPS細胞由来ニューロンと大脳オルガノイドによる神経疾患モデルとは?
- 用途別細胞培養
近年多能性幹細胞(ES/iPS細胞、PSC)由来のニューロンやグリアを得られるようなったことで、これまでは困難だった、ヒト神経疾患表現型のin vitroでの再現が可能になってきました。加えて、CRISPR-Cas9などの遺伝子編集技術で原因遺伝子を修復・改変することで、より詳細な疾患メカニズムの解明、および細胞治療の研究が進んでいます。iPS細胞を利用したドラッグスクリーニングが個別化医療へと展開する日も近いかもしれません。さらに、最新のオルガノイド培養技術ではヒト脳の3次元構造を再現できるようになり、脳発生や高次脳機能の研究がin vitroで実現しつつあります。治療法がなかった難病の研究に光が当たることが期待されます。
ヒトES/iPS細胞からのニューロン・グリア分化
ヒトES/iPS細胞からのニューロン・グリア分化
ヒトES/iPS細胞および神経幹細胞から、モノレイヤー培養またはニューロスフェア培養にて各種のニューロン・グリアに分化、成熟させることができます。
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ヒトiPS細胞由来の神経疾患モデル
これまでにiPS細胞から、多岐にわたる神経疾患モデルが作成されています。
神経発達・精神障害モデル
疾患名 | iPSC由来細胞 |
自閉症(特発性) | 神経前駆細胞、皮質ニューロン |
コケイン症候群 | iPS細胞 |
ダウン症候群 | 神経前駆細胞、ニューロン |
ドラベ症候群 | グルタミン酸作動性ニューロン |
脆弱X症候群 | 前脳ニューロン |
フェラン-マクダーミド症候群 | 前脳ニューロン |
レット症候群 | ニューロン、神経前駆細胞 |
統合失調症 | ニューロン、海馬歯状回ニューロン |
ティモシー症候群 | 皮質ニューロン |
神経変性疾患モデル
疾患名 | iPSC由来細胞 |
副腎白質ジストロフィー | オリゴデンドロサイト、ニューロン |
アルツハイマー病 | 皮質ニューロン |
筋萎縮性側索硬化症 | 運動ニューロン、グリア細胞 |
家族性自律神経障害 | 神経堤前駆細胞 |
フリートライヒ運動失調症 | ニューロン |
遺伝性痙性対麻痺 | 皮質脊髄運動ニューロン |
ハンチントン病 | 神経幹細胞、アストロサイト |
マシャド・ジョセフ病 | グルタミン酸作動性ニューロン |
パーキンソン病 | ドーパミン作動性ニューロン |
球脊髄性筋萎縮症 | 運動ニューロン |
脊髄性筋萎縮症 | 運動ニューロン |
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3次元培養(ミニ大脳)によるヒト神経疾患モデル
ヒト脳の3次元構造を再現した神経オルガノイド(ミニ大脳)の培養によって、様々な疾患モデルが作成されています。
疾患名 | 細胞タイプ |
遺伝性大頭症 | 神経前駆細胞 |
ティモシー症候群 | 前脳assembloid中の皮質GABA作動性ニューロン |
遺伝性小頭症 | 神経前駆細胞 |
大頭症を伴う自閉症スペクトラム症 | 前脳前駆細胞、ニューロン |
アイカルディ・グティエール症候群 | 皮質ニューロン、アストロサイト |
ミラー・ディーカー症候群 | 放射状グリア、前駆細胞 |
ウイルス性小頭症 | 皮質前駆細胞、ニューロン、アストロサイト |
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おすすめ製品のご紹介
ヒトES/iPS細胞由来 神経研究に最適「STEMdiff Neural System」
STEMCELL Technologies社の「STEMdiff Neural System」シリーズには、ヒトES/iPS細胞をもちいた神経疾患の研究に最適な、高品質の製品が揃っています。
- ES/iPS細胞から神経前駆細胞の誘導
- 神経前駆細胞の増殖
- 神経細胞、アストロサイトの分化・成熟
- 神経前駆細胞の凍結保存
- 神経前駆細胞、神経細胞の同定
ヒトES/iPS細胞由来 大脳オルガノイド作成に最適「STEMdiff Cerebral Organoid」
STEMCELL Technologies社の「STEMdiff Cerebral Organoid」は、ヒト ES/iPS 細胞から大脳オルガノイドに分化・成熟させるための培地です。
- 無血清条件で大脳オルガノイドに分化・成熟
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- Lancasterらの論文をもとに効率と再現性を高めるよう最適化