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2020/10/20

ヒト多能性幹細胞から効率よく神経誘導「STEMdiff SMADi Neural Induction Kit」

  • 用途別細胞培養

多能性の神経前駆細胞(NPC)は、中枢神経系(CNS)の主要な細胞タイプであるニューロン、星状細胞(アストロサイト)、希突起膠細胞(オリゴデンドロサイト)を生成します。胚性幹(ES)細胞や人工多能性幹(iPS)細胞を含むヒト多能性幹細胞(hPSC)は、さまざまな方法によってNPCへの分化を方向付けることができます。「神経誘導/neural induction」として知られるこの過程は、下流アプリケーションに用いる高品質のNPCを生成するために、効率的かつ信頼性が高い必要があります。hPSC由来のNPCは、ヒト神経系発達の研究、神経障害のモデル化、および潜在的な治療用分子のスクリーニングに広く使用されています。

ヒト多能性幹細胞からの神経系分化誘導とは

ヒト多能性幹細胞(hPSC)から神経系への分化誘導過程は、3胚葉(内胚葉、中胚葉、外胚葉)のうち外胚葉(ectoderm)に誘導することから始まります(図1)。外胚葉は神経外胚葉(neuroectoderm)を経て神経前駆細胞(neural progenitor cell, NPC)に分化します。NPCは多能性を持ちますので、各種のニューロンおよびグリア細胞へと終末分化させることができます。またNPCを培養して増殖し、凍結保存することも可能です。

STEMdiff™ SMADi Neural Induction Kitは、hPSCからNPCへの神経誘導に最適化された培地製品です。得られたNPCは、ニューロンまたはグリアの分化・成熟用STEMdiff™培地で終末分化させることができます。またNPCはSTEMdiff™ Neural Progenitor Mediumで増殖させることも可能です。一般的に、分化誘導を成功させるためには添加する成長因子の濃度とタイミングが重要になりますが、STEMdiff™はそれらが最適化された専用キット製品ですので、面倒な条件検討が必要ありません。

外胚葉分化の流れ.png

図1. ヒト多能性幹細胞からの外胚葉および神経分化と対象製品

STEMdiff™ SMADi Neural Induction Kitの特長

STEMCELL Technologies社の STEMdiff™ SMADi Neural Induction Kit(製品コード:ST-08581、ST-08582)は、ヒト多能性幹細胞由来 神経研究向け「STEMdiff™ Neural System」製品群に含まれる神経誘導用培地です。ヒト多能性幹細胞(ヒトES/iPS細胞、hPSC)からの神経誘導系を新たに立ち上げる方はもちろん、中枢神経系への神経誘導効率の低さ・バラつきを改善したい方にもおすすめです。

STEMdiff SMADi Neural Induction Kitの特長

  • 血清フリーの組成
  • ヒト多能性幹細胞から中枢神経(CNS)タイプの神経前駆細胞へ高効率に誘導
  • non-CNS細胞タイプへの分化は抑制
  • 通常は神経誘導しにくいES/iPS細胞株にも有効
  • 得られた神経前駆細胞からの、神経・グリア細胞への分化効率が向上
  • EB法、モノレイヤー法どちらでも神経誘導が可能
  • STEMCELL Technologies社のヒト多能性幹細胞維持培地* からスムーズに神経誘導へ移行
    (*) mTeSR™1、mTeSR™ Plus、またはTeSR™-E8™

STEMdiff™ SMADi Neural Induction Kitの内容

従来の神経誘導用培地、STEMdiff™ Neural Induction Medium(製品コード:ST-05835、ST-05839)に、「SMADi Supplement」を追加したキットです。このSupplement(※)の成分がTGF-β/BMP依存性のSMADシグナルを阻害することにより、高品質でない、あるいは神経誘導が困難な細胞株でも神経誘導効率の向上が期待できます。なお、必要に応じてSupplementの添加を省略することも可能です。

※ 以下Studer protocolの「dual SMAD inhibition」を基に開発された組成ですが、組成の詳細は非開示となっております。

神経誘導のプロトコル EB法 or モノレイヤー法

STEMdiff™ SMADi Neural Induction Kitは、胚葉体(embryoid body)形成と再播種、選択を行う「EB法」(図2)と、シングルセルを播種して単層培養する「モノレイヤー法」(図3)のどちらでも神経誘導が可能です。両方法の比較を簡単にまとめました。

神経誘導プロトコル
EB法 モノレイヤー(単層培養)法
シングルセル神経前駆細胞までの日数 16 - 19 6 – 9*
神経誘導の確認方法 目視および表現型での同定 表現型での同定のみ
Natural rosette選択操作の必要性 Yes No
適合するヒトES/iPS細胞維持培地 mTeSR™1、mTeSR™ Plus、TeSR™-E8™** mTeSR™1、mTeSR™ Plus、TeSR™-E8

* モノレイヤー法で作製したNPCは、下流の分化開始前に18 - 21日間(3継代)培養することで最適な結果を得られます。
** TeSR™-E8™で維持された細胞をEB法で神経誘導する際は、SMADi supplementの添加が強く推奨されます。

neural_induction_EB.jpg

図2. EB法のワークフロー

neural_induction_monolayer.jpg

図3. モノレイヤー法のワークフロー

神経前駆細胞の凍結保存には、STEMdiff™ Neural Progenitor Freezing Medium(ST-05838)の使用をおすすめします。

神経誘導のポイント

hPSCからの神経誘導を成功させるためには、EB法とモノレイヤー法に共通して以下のポイントが重要になります。

  • 高品質に維持培養されたhPSCの使用
  • SMADi supplementの添加
  • 適切な接着用マトリックスの使用
  • ROCK阻害剤Y-27632の添加

従来培地との比較データ

従来のSTEMdiff™ Neural Induction Medium(NIM)では、ES/iPS細胞の品質や細胞株の種類によっては、CNSタイプの神経前駆細胞の誘導効率が低下するという問題がありました。その場合、EB法ならNeural rosetteの選択操作による神経前駆細胞の濃縮ができますが、モノレイヤー法では不可能です。

STEMdiff™ SMADi Neural Induction Kit(NIM + SMADi)では、EB法、モノレイヤー法どちらのプロトコルでもCNSタイプの神経前駆細胞の誘導効率が向上し、再現性の高い神経誘導が可能になります。またモノレイヤー法なら、濃縮操作やEB形成用プレートも不要なので、簡便かつコスト削減につながります。

mTeSR™1で維持したヒト多能性幹細胞から神経誘導した際のマーカー発現

SMADi_NIM_compared.jpg

SMADi Supplementの添加(NIM + SMADi)により、EB法、モノレイヤー法ともにCNSマーカー(PAX6, SOX1)の発現が顕著になりました。

モノレイヤー法で7日間神経誘導した際のマーカー発現

SMADi_NIM_compared_graph.jpg

SMADi Supplementの添加(NIM + SMADi)により、CNSマーカー(PAX6, SOX1)陽性細胞の割合が有意に上昇し、神経堤マーカー(SOX10)陽性細胞は激減しました。

 

神経誘導後の神経・グリア細胞への分化成熟

STEMdiff™ SMADi Neural Induction Kitで神経誘導して得られた神経前駆細胞は、STEMdiff™無血清培地によって以下の各細胞に分化および成熟させることができます(図1も参照)。

前脳型ニューロン

グルタミン酸作動性およびGABA作動性ニューロンへの分化・成熟:

中脳型ニューロン

ドーパミン作動性ニューロンへの分化・成熟:

アストロサイト

星状細胞への分化・成熟:

上記以外に、汎用性の分化向け製品(BrainPhys™、NeuroCult™ SM1など)を使用して各種細胞に分化および成熟させることも可能です。

神経誘導のよくある質問

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