ラーニングコーナー
2018/06/27
プロトコール比較:肝臓 vs. 膵臓オルガノイド培養の違いとポイント
- 用途別細胞培養
過去5年間で多能性幹細胞(ES/iP細胞、PSCs)または成人組織直接から体外(ex vivo)で肝臓および膵臓組織を生成させる技術は、この分野で大きなブレークスルーをもたらし、肝臓・膵臓の研究および治療の可能性を広げる大きな飛躍となりました。
肝臓および膵臓オルガノイド培養システムは、肝臓や膵臓疾患のモデル化に非常に重要で革新的なツールとなります。
肝臓・膵臓オルガノイド培地
STEMCELL Technologies社の「HepatiCult」と「PancreaCult」は、Meritxell Huch, PhDらが開発した培養方法から改良され、よりシンプルな肝臓・膵臓オルガノイド培養系になっています。
HepatiCult(製品コード:ST-06030)
マウス肝前駆細胞オルガノイドを4~5日で形成可能な無血清・definedな完全培地
PancreaCult(製品コード:ST-06040)
マウス膵外分泌部オルガノイドを7日以内で確立し、維持する無血清・definedな完全培地
開発者の紹介
Meritxell Huch, PhD
Principal Investigator, Wellcome Trust/ CRUK Gurdon Institute, Cambridge, UK
Stem Cells and Tissue Regeneration Laboratory
PhDを取得後、Hubrecht Organoid Technology:The HUB でDr. Hans Cleversの下で研究
オルガノイド培養のポイント
肝臓・膵臓オルガノイド培養のポイントおよび注意点
Pre-wetting
細胞がチップやピペットに吸着し、細胞の回収量減少を防ぐため、チューブ・ピペットによるPre-Wettingが効果的(収率の向上が期待される)
播種の密度
オルガノイドを確立する前(P1+)の播種密度は、非常に重要。高密度だと栄養が届かず、中心部細胞が死滅してしまう(その場合は継代して、周囲の細胞は再度使用可能)
継代のタイミング
オルガノイドのルーメンが暗くなってから、すぐに継代する
継代希釈
初回はプロトコールに従う、2回目以降は分割比:1:10~1:30
おすすめのプロトコール
肝臓・膵臓断片とオルガノイドのシングルセル化方法、オルガノイドの凍結保存および継代は、以下のプロトコールを活用ください。
肝臓vs. 膵臓オルガノイド培養システムの比較
プロトコールの比較
肝臓オルガノイド培養 | 膵臓オルガノイド培養 | |
---|---|---|
プロトコール |
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ウェル |
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マーカー発現 | 肝幹・前駆細胞(PROM1、AXIN2、SOX9、CD44)、ダクト細胞(KRT19、HNF1b) および肝前駆細胞マーカー(HNF4a、AFP) |
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プロトコールの詳細は、こちらもご参照ください。
Matrigelを用いたオルガノイド培養システム
肝臓・膵臓オルガノイドの培養は、肝管・膵管断片やシングルセルまたは凍結オルガノイドからスタート可能です。Matrigel懸濁液培養またはMatrigelドームに埋め込んだ培養も可能です。
「HepatiCult」および「PancreaCult」は、Matrigelドームに埋め込んだオルガノイドの培養および希釈したMatrigel懸濁液でのオルガノイドの浮遊培養のどちらもサポートします。
Matrigelドーム培養システムについて
HepatiCult
Matrigelドーム培養で得られたマウス肝管断片由来の肝前駆細胞オルガノイドは、4~7日以内に継代可能
PancreaCult
7日以内で膵臓オルガノイドを形成可能
Matrigel懸濁培養システムについて
HepatiCult
Matrigel懸濁液培養で得られたマウス肝管断片由来の肝前駆細胞オルガノイドは、4~7日以内に継代可能
PancreaCult
7日以内で膵臓オルガノイドを形成可能
得られたオルガノイドの形態例
肝臓オルガノイド
得られたオルガノイドは、肝細胞に典型的な形態(タイトジャンクション、二核、多角形)を示しています。
(20回継代した肝前駆細胞由来オルガノイド)
膵臓オルガノイド
外分泌部膵臓オルガノイドは、膵臓前駆細胞(PDX1:赤)および膵管細胞(KRT19、緑)のマーカーを発現します。
(12回継代したday 5のオルガノイド。DAPI:青)